国産ワクチン研究の司令塔創設、製造拠点整備も含め5千億円を計上…たぶん無駄

国産ワクチン研究の司令塔創設、製造拠点整備も含め5千億円を計上
以下は、記事の抜粋です。


政府は11月19日に決定する経済対策の一環として、国産ワクチンの開発基盤強化に向け、研究の司令塔機能を担う拠点を創設する方針を固めた。パンデミックへの対応力を高めるためで、ワクチン製造拠点の整備促進を含め5000億円規模の関連予算を計上する方向だ。

研究開発支援の拠点となるのは、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)に設置する「先進的研究開発戦略センター」(SCARDA)だ。ここを司令塔に、産学官の有力な研究プロジェクトに集中的に研究費を投入し、パンデミックに対応するワクチンの迅速な開発を進める。

創薬に取り組むベンチャーの育成支援にも乗り出す。新興企業に投資するベンチャーキャピタルの出資を要件に、政府が開発費を支援する。大学などに世界トップレベルの研究拠点を形成することも目指す。一連の研究開発支援のため、AMEDに2500億円超の基金を設ける方針だ。

製造拠点の整備促進では、製薬企業に補助金を出し、緊急時にワクチン製造に転用できる施設の整備や改修を促す。平時は各企業が自社製品などを製造するが、パンデミックの際には、政府の指示でワクチン製造に切り替える。製造拠点支援には約2300億円を計上する。

国産ワクチンの開発・製造支援のポイント
【研究開発】
▽国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)に先進的研究開発戦略センター(SCARDA)を設置
▽大学などに世界トップレベルの研究拠点を形成
▽創薬に取り組む新興企業を育成
【製造拠点整備】
▽パンデミック発生時にワクチン製造に転用できる施設を整備

【解説】予算不足で「敗戦」教訓に
政府が、開発・製造の支援に本腰を入れるのは、「ワクチン敗戦」ともささやかれた事態を繰り返さないためだ。日本では、ワクチンを含む感染症研究に十分な資金が投じられてこなかった。2019年度の日本の感染症関連の研究開発予算は74億円。米国の約5300億円、中国の約2600億円などとの差は大きい。政府は今回の対応を契機に、腰を据えて開発・製造基盤の強化に取り組む必要がある。煩雑で、緊急時でも時間を要する薬事承認手続きなど、運用面の改善も求められる。


昨日の記事に書きましたが、これまで日本のワクチンは、武田やアステラスなどの大企業ではなく、北里研究所(埼玉県北本市)、化血研の主要事業を承継したKMバイオロジクス(熊本市)、デンカ生研(東京都)と阪大微生物病研究会(吹田市)の4つの中小メーカーで作られて来ました。

これらの4社は、昔ながらの鶏卵を使用する方法でワクチンを作っていますが、海外のワクチンメーカーは、新型コロナウイルスワクチンの開発からみても明かなようにはるかに進んでいます。これらの海外企業は、鶏卵ではなく遺伝子組換えや合成mRNAを使って、大量のワクチンが速く作れる強力な生産体制と研究組織を持っています。

新型コロナウイルスワクチンの場合、KMバイオロジクスの他に塩野義や第一三共などの比較的大きな国産メーカーも開発に参加していますが、以前の記事に書いたように、どの国産メーカーの開発も、既に世界中で承認され効果が認められているファイザー社(mRNA)やモデルナ社(mRNA)のワクチンからみると周回遅れです。実際に国産新型コロナウイルスワクチンが世界で使われる可能性はゼロです。

以前にも書いたように、先進諸国ではヒトの平均寿命が生物学的限界に近づきつつあり、「新薬の登場よりも、特許切れのペースが速い」状況の中で、「新薬を次々と研究開発して儲ける」という製薬会社のビジネスモデルは既に過去のものになっています。海外の製薬大手の多くは、研究はベンチャーに、臨床開発はCROにアウトソースし、マーケティングと監督官庁との交渉に特化した「商社」的なものに変化しています。特許切れの薬を作るジェネリック各社は泥沼の価格競争に嵌っています。このように日本の製薬業界は斜陽産業です。

今回の政府の方針には、厚労省の天下り先の国産ワクチンメーカーの再編案などはありません。「国産ワクチンの開発基盤強化」を謳った5000億円は知らないうちにどこかに消えて行くでしょう。

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