インフルエンザワクチン不足は本当なのか？

インフルエンザワクチン不足は本当なのか？厚労省やメーカーはともに「例年並みに供給」と回答
以下は、記事の抜粋です。

9月29日、日本感染症学会が声明を出し「2021-2022年シーズンもインフルエンザワクチンの積極的な接種を推奨」として、ワクチン接種を呼びかけた。だが、その一方で毎日新聞は10月22日に「インフルワクチン供給に遅れ　不足で打てないケースも　コロナ余波」と題した記事を配信した。

「ワクチンの予約の一時打ち切りや、ワクチン不足で打てないケースも出ている」と紹介し、その背景には「新型コロナウイルスのワクチン量産に伴う製剤用の資材不足などの影響で、今季の季節性インフルエンザワクチンの供給が例年より遅れている」としている。

まず、自宅近所の都内クリニックに電話で尋ねてみると、「もう予約で埋まっています」と答えたクリニックが1カ所。ほかに聞いた4カ所は意外にも「予約はできませんが、今日なら打てます」というのだ。その中の1カ所で実際に接種することにした。

クリニックでは、ワクチン接種を待つ行列が道路にまで伸びている。比較的大きなクリニックだったが、30人以上は待機していただろう。待つこと20分ほどの後、予防接種ができたあと、このクリニックの事務長に今季のインフルエンザの予防接種の状況について聞くと、こう話す。

「うちでは毎日50人ほどがインフルエンザワクチンの接種にいらっしゃいます。メーカーとの契約で最終的に入荷されるワクチンの数は決まっていますが、次にいつワクチンが入荷されるかはわからない状態なんです」

このクリニックでは先々の供給の見通しがなかなか見えないために、予約は取っていないという。正確なインフルエンザワクチン供給状況はどうなのか。厚労省健康局にも尋ねた。

「2021年度のワクチン出荷予定は約2800万本。これは2020年度に比べると少ない量です。2020年度は選定した株のワクチン製造効率が高かったので、じつはこの1年だけ突出して供給量が多くなっています。そのため、2021年度の供給量も例年並みとなっております。

出荷ペースについては11月初めの段階で、2021年度出荷される全体量の約3分の2程度が出ております。残りもこれから出荷される予定ですので、接種希望の方にはもう少しお待ちいただくことを検討していいただくようお願いしております」

インフルエンザワクチンを販売・製造している各社も同様の認識のようだ。インフルエンザワクチンのトップシェアを占めるKMバイオロジクス株式会社は「2020年と同じ量を生産できています。例年並みのペースで出荷できています。他社の状況はわかりませんが……」と答える。

同じく「全体的な供給量としては、2020年度と同程度を予定しています」と答えたものの、「新型コロナワクチンの製造を受けて、インフルエンザワクチンの製造に必要な資材の確保に時間を要しています」とした第一三共株式会社のように、供給ペースに遅れが出ていると明かした会社もあったが、製造・販売量に “大打撃” があると答えた会社はなかった。

それでは、なぜ人々は予防接種に殺到してしまうのか――。インターネット上の情報拡散に詳しい東大の鳥海教授は、一般に影響を与えるほど『インフルエンザワクチンが不足している』という言説がインターネット上で広がったとはいえないでしょう」と話す。

では、人々の不安はどこから来ているのか。新潟青陵大の碓井教授は、「報道では『現在のワクチン供給量が少ない』『少し経てば供給量は追いつく』と両方を併記しているものが多いです。しかし、“不安になると不安な情報を探す” という人間の傾向によって前者だけが認識されていったのではないでしょうか。今回のインフルエンザワクチンも供給量が足りているのであれば、行政が中心となって『十分にあります』と発信していくことが大事だと思います」と話す。

最後に再度、厚労省保健局からの呼びかけを聞いてほしい。「ワクチンの出荷予定数の約2800万本は特に少ないわけではありません。不安に感じていらっしゃる方には申し訳ないのですが、もう少しお待ちいただけるようにとお願いを申し上げます」

この記事では、インフルエンザワクチン不足を否定し、厚労省保険局の呼びかけを最後の結びにしています。しかし、記事に出てきた病院の事務長が言っているように、多くの病院やクリニックでは「次にいつワクチンが入荷されるかはわからない状態」です。

私が関連する病院でも11月20日現在では、外来に来られた患者さんがインフルエンザワクチン接種を希望されても、当日の接種も予約もできない状態で、少なくとも外来の受付や看護師さんに聞いても、いつ接種が再開できるのかわからない状態です。

インフルエンザワクチンは、北里研究所（埼玉県北本市）、化血研の主要事業を承継したKMバイオロジクス（熊本市）、デンカ生研（東京都中央区）と阪大微生物病研究会（大阪府吹田市）の4つの国産メーカーで作られており、輸入はされていません。これらの4社は、昔ながらの鶏卵を使用する方法でワクチンを作っていますが、海外の大手企業はコロナウイルスワクチンの開発からみてもわかるようにはるかに進んでいます。グラクソ・スミスクラインは昆虫細胞、ノバルティスは、犬の腎臓由来のMDCK細胞を使っています。これらの培養細胞を使う方法は、鶏卵法よりも大量のワクチンを速く製造することができます。最近では、mRNAを使ったインフルエンザワクチンの製法も開発され、培養法よりも大量のワクチンが速く作れるようになりつつあります。

国産ワクチンメーカー4社はすべて、厚労省の天下り先です。天下りを受け入れるのは、勝てそうもない海外製ワクチンをブロックするためかもしれません。インフルエンザの感染は幸いまだ始まっていないようですが、もうシーズンには入っています。コロナウイルスワクチンのように、緊急で輸入することはできるはずですが、政府はやろうとしていません。上の記事やそこに書かれているメーカーや厚労省のコメントや学者の意見をそのまま受け取るのには抵抗があります。