Donepezil and Memantine for Moderate-to-Severe Alzheimer’s Disease
以下は、論文要約の抜粋です。
背景:これまでの臨床試験において、軽~中等度のアルツハイマー病に対するコリンエステラーゼ阻害薬の有効性は示されているが、病気が中等度~高度に進行した場合に薬物治療が有効かどうかについては不明だった。
方法:3ヶ月以上のドネペジル投与歴があり、重症度が中等度または高度のアルツハイマー病患者295例を、ドネペジル継続群、ドネペジル中止群、ドネペジル中止+メマンチン開始群、ドネペジル継続+メマンチン開始群のいずれかに割り付けた。試験治療は52週間行った。主要アウトカムは、Standardized Mini–Mental State Examination(SMMSE、高いほど認知機能が良好)のスコアとBristol日常生活動作尺度(BADLS、低いほど障害が少ない)のスコアとした。
結果:ドネペジルを継続した患者では、中止した患者と比較して、SMMSEスコアが平均1.9ポイント高く、BADLS スコアが3.0ポイント低かった。メマンチンを投与した患者ではメマンチンのプラセボを投与した患者と比較して、SMMSEスコアが1.2ポイント高く、BADLSスコアが1.5ポイント低かった。ドネペジルとメマンチンの併用は、ドネペジル単独投与を上回る有意なベネフィットは認められなかった。
結論:中等~高度のアルツハイマー病患者において、ドネペジルによる継続的治療は、12ヶ月間にわたって、臨床的な認知機能と機能へのベネフィットに関連した。
メマンチン(メマリー®)は、NMDA受容体に対する部分アンタゴニストで、学習と記憶に関与する神経伝達であるグルタミン酸の過剰な刺激による神経細胞障害に対して保護作用を発揮すると考えられています。日本では昨年12月に承認されました。
同薬は、中等度および重度のアルツハイマー病患者に対する適応が承認されています。軽度アルツハイマー病患者にも適応外で処方されることも多いようですが、関連記事にあるように、臨床試験の結果は否定的です。
中等度~高度に進行したアルツハイマー病を対象とした本臨床試験でも、メマンチンの効果がドネペジル(アリセプト®)よりも弱いこととドネペジルとの併用効果がないことが確認されました。また、ドネペジルは勿論、メマンチンやガランタミン(レミニール®、コリンエステラーゼの阻害に加えてニコチン受容体をアロステリックに刺激)などの新薬も、疾患の治癒や進行の抑止は望めません。選択肢は増えたように見えますが、認知症治療薬はまだまだまだです。
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コメント
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tak先生
お早う御座います、今週も研究、講義再開、お疲れ様です。
母はアリセプト投与しましたが喘息持ちで使えませんでした。
低量では問題なかったのですが常用量に上げた途端喘息、で、断念、5年の入院の末昨年末逝きました。
遺伝体質で自分も発症するかもです、まだ73ですが母は80歳頃から、覚悟はしてますが。
taniyan
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読者です。
メマンチンには期待をしていたのですが・・・難しいようですね。