武田薬、国内で3剤を新発売、販売金額は数十億円を見込む
以下は、記事の抜粋です。
医薬品大手の武田薬品工業が7月6日前場取引時間中に、不眠症治療剤「ロゼレム錠」、2型糖尿病治療剤「メタクト配合錠」、2型糖尿病治療剤「アクトス」の口腔内崩壊錠の3剤を国内で6日から新発売したと発表。
「ロゼレム」は従来の不眠症治療剤とは作用メカニズムが異なる薬剤で、薬物依存性を示さないことからDEA(米司法省麻薬取締局)による規制を受けない不眠症治療剤として、05年7月にFDA(米食品医薬品局)から販売許可を得ている。
ロゼレム(一般名:ラメルテオン)は、日本では2010年4月に承認を取得しました。適応は「不眠症における入眠困難の改善」で、用法・用量は「成人に1回8mgを就寝前に投与」です。代謝は、CYP1A2が主ですので、CYP1A2を阻害するSSRIのフルボキサミン(商品名:デプロメールorルボックス)は併用禁忌です。
ラメルテオンは、脳の松果体のホルモンであるメラトニン受容体アゴニストです。メラトニンはトリプトファンからセロトニンを経て、松果体で合成されます。合成酵素の一つN-アセチル転移酵素の活性は、視交叉上核によって制御され、夜間に高く、日中低いという概日リズムを示します。活性の差は数十倍に達し、血中メラトニン濃度も昼夜で著明に変動します。アメリカでは、メラトニンはサプリメントとして売られていて、時差ぼけ対策に飲まれたりしています。
ラメルテオンは、メラトニンの2つの受容体、MT1とMT2の両方にメラトニンよりも高い親和性で結合します。ただ、メラトニンそのものを服用した場合と効果が異なるかどうかは良くわかりません。いずれにしても、ラメルテオンは、視交差上核のメラトニン受容体を刺激して、不眠症を改善するということになっています。
しかし、NEJMの記事によると、ロゼレムはFDAの第Ⅲ相臨床試験で、若い成人では14分、高齢者では7分入眠時間を短縮したけれども、自覚症状はまったく改善しなかったそうです。外来患者を対象とした場合、プラセボと有意差がない臨床試験も報告されています。途中で目覚める回数、全睡眠時間あるいは睡眠の質も改善しなかったそうです(記事をみる)。このように、05年のFDAによる承認決定は、ぎりぎりの判定だったようです。
不眠症治療は現在、ベンゾジアゼピン系薬物が中心ですが、鎮静・催眠作用や抗不安作用がある一方、筋弛緩作用や記憶障害などの副作用や依存性や耐性などの問題があります。これは、非ベンゾジアゼピン系のゾルピデム(商品名:マイスリー)なども同じです。
一部では、ラメルテオンにはこれらの副作用がない夢の睡眠薬のように報道されています。確かに副作用は少なそうですが、睡眠作用も弱そうです。
ラメルテオンの構造式
参考記事
ロゼレム:メラトニン受容体を刺激する日本発の催眠剤
自然な眠りを求めて-ロゼレムの研究開発
コメント
SECRET: 0
PASS:
医学生です。
記事の中の「非ベンゾジアゼピン系のゾピクロン(商品名マイスリー)」という部分ですが、
・成分名:ゾピクロン:zopiclone=商品名:アモバン、ゾピクール、など、
・成分名:ゾルピデム:zolpidem=商品名:マイスリー、など、
ではないでしょうか。
2013年1月2日(水)
SECRET: 0
PASS:
>宮里ルカ(仮名)さん
ご指摘ありがとうございました。修正しました。