乳腺外科事件、鑑定の科学性について

手術後わいせつ事件、女性を支援する弁護団結成 「非科学的な判決」と批判
以下は、記事の抜粋です。


手術後の麻酔が残っている女性患者にわいせつな行為をしたとして、準強制わいせつ罪に問われた男性医師に2月20日、無罪が言い渡された。これを受け、被害を訴えている女性を支援する弁護団が3月15日、結成され、記者会見を開いた。

高橋正人弁護士は、今回の無罪判決を「非科学的な判決」と批判し、「鑑定資料を再鑑定できないかのように報道されているがそれは間違い」と話す。

警視庁科学捜査研究所は、まずガーゼを半分に切り、もう半分を保存。片方のガーゼから抜いた4本の糸からアミラーゼを検出し、4本を抜いた後のガーゼから抽出液を作ってDNAを検出したという。

高橋弁護士は「今回、科捜研が廃棄したのは抽出液でありガーゼの半分は残っている」と指摘。

●事件の概要
女性は2016年5月、東京都の病院で、右乳腺腫瘍の摘出手術を受けた。手術後、病室に運ばれて、「(担当していた医師に)乳首を舐められた」「(医師が)胸を見ながらマスターべーションしていた」として、被害を訴えた。

男性医師は、準強制わいせつ罪で逮捕・起訴されたが、一貫して「冤罪」を主張。公判では、(1)女性の証言の信用性、(2)DNA鑑定などが、科学的な証拠として認められるか――が争点となった。

東京地裁は2月20日、(1)女性が麻酔による「せん妄」という状態で、性的な幻覚をみた可能性がある、(2)女性の乳首から検出されたDNAは、触診や別の医師との会話などで付着した可能性があり、DNA鑑定の信用性に疑いがあるとして、男性医師に対して無罪を言い渡した。

東京地検は3月5日、男性医師を無罪とした東京地裁判決を不服として、東京高裁に控訴した。


科捜研を含む検察と原告側の弁護団は、原告の乳首をなめた唾液中に含まれるDNAでなめた個人が特定できると考えているようです。本当でしょうか?

これについて、DNA鑑定を専門とする弁護側証人の黒崎氏が検証実験を行ったと報告されています(記事をみる)。以下は、その抜粋です。


黒崎氏は「科学の本質は再現性があること。科学鑑定は事後に検証可能な状態で行われるべき」と強調。その上で刑事裁判での鑑定では、「通常の科学実験以上に厳しく実施される必要がある」と訴えた。採取の状況が写真で記録されていないこと、抽出液が破棄されていること、DNA量の検出では標準試料の増幅曲線がないので定量が適切になされたかどうかを事後検証できないこと、アミラーゼ検査では陽性反応の写真がないこと、実験ノートが鉛筆書きであることを厳しく批判し、科捜研の体制を「抜本的・根本的に改めるよう強く求める」と述べた。

検察側がピーク高を根拠にDNA定量の正しさを主張していることについて、「RFUはDNA量を示すものではなく、原理として成り立たない」として疑問を呈した。


黒崎氏の意見は正しいと思います。資料が残っているのであれば、再検査すべきです。その時には、科捜研だけではなく、黒崎氏などの部外者の同席のもとで実験を行うべきだと思います。

あと、一般的なことですが、抽出したDNAが被告男性のものだけで、原告女性のDNAがなかったというのもおかしいし、PCRのバンドパターンが問題になっていないのもおかしいと思います。

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