ヒトのメラノーマを引き起こす細胞は、NGF受容体CD271を発現する: メラノーマ幹細胞の探索

Human melanoma-initiating cells express neural crest nerve growth factor receptor CD271

以下は、論文の要約です。


ここ数年、ヒトのメラノーマにがん幹細胞が存在するのかどうかが問題になっている。本研究では、メラノーマにおいて、生きた細胞の移植を最大限にする方法を用いて、メラノーマ腫瘍幹細胞(melanoma tumour stem cell;MTSC)を高純度のCD271陽性MTSC細胞集団として単離可能であることを示す。

この研究において用いられた腫瘍サンプルは、多様な部位や病期の患者から得られた。FACS(fluorescence-activated cell sorting)によって分離した高生存能細胞を、マトリゲルを含む溶媒に再懸濁した後、T細胞、B細胞、そしてナチュラルキラー細胞を欠損するRag2 -/- γc -/- マウスに移植した。

メラノーマから分離したCD271陽性細胞集団は、90%(10個中9個)の確率で腫瘍を引き起こした。単離したCD271陽性メラノーマ細胞を、 Rag2 -/- γc -/- マウスに生着させたヒトの皮膚あるいは骨に移植すると、メラノーマが生じた。しかし、CD271陰性細胞を移植してもメラノーマは生じなかった。

また、マウスに移植されたヒトCD271陽性メラノーマ細胞由来の腫瘍は、生体内で転移能があった。今回用いたCD271陽性メラノーマ細胞では、TYR、MART1、MAGEを発現しない率がそれぞれ86%、69%、68%だったことは、これらの抗原に対するT細胞療法が、一時的な腫瘍縮小しか引き起こさない理由かもしれない。


研究者らは以前、がんの初期には自己複製能を持つ少数の腫瘍形成細胞の集団が存在し、これらの少数の細胞は非悪性細胞にも分化しうるという仮説を提唱しています。その後、がんが進行すると自己複製能を持つがん細胞が腫瘍内で優位になると考えています。

このような非悪性細胞にも分化しうる自己複製能を持つ少数の腫瘍形成細胞の集団を「腫瘍幹細胞」と考えているようです。本研究では、神経成長因子(nerve growth factor、NGF)受容体であるCD271を発現するメラノーマ細胞がこの腫瘍幹細胞に該当すると主張しています。

できれば、CD271の発現を抑制して腫瘍形成能が消失するところを示して欲しかったですが、CD271を標的とする抗体や低分子化合物がメラノーマ幹細胞治療薬となる可能性を示したことが評価されたのだと思います。

がんの標準治療(Standard therapy)と幹細胞治療(Stemline therapy)

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