慢性C型肝炎ウイルス遺伝子型1型感染 に対する新しいプロテアーゼ阻害薬ボセプレビルの効果

Boceprevir for Untreated Chronic HCV Infection
Boceprevir for Previously Treated Chronic HCV Genotype 1 Infection

上は未治療の、下はそれまでの治療が無効であった慢性C型肝炎ウイルス(HCV)遺伝子型1型患者を対象として、ボセプレビル(boceprevir)+ペグインターフェロン‐リバビリン併用療法とペグインターフェロン‐リバビリン単独療法を比較した第3相臨床試験の報告です。

HCV感染者は世界で1億7000万人以上と推測されており、現在の標準治療は、ペグインターフェロン‐リバビリン療法です。しかし、標準治療による持続性ウイルス学的著効率は50%を下回っています。HCVには6つの遺伝子型がありますが、HCV遺伝子型1型感染の症例で特に著効率が低いとされています。

ボセプレビルは、HCV非構造3(NS3)活性部位に結合するプロテアーゼ阻害薬で、テラプレビル(telaprevir)などの他のプロテアーゼ阻害薬と同様、耐性ウイルスの出現を抑制するためにペグインターフェロン‐リバビリンと併用(プロテアーゼ阻害薬を追加投与)する必要があります。

未治療の場合(上の論文)、ボセプレビルを追加投与した場合の持続性ウイルス学的著効率が、コントロールである標準治療の40%に比べて、追加投与24週で67%、44週で68%と有意に高いことが示されました。また、それまでの治療が無効であった場合での臨床試験(下の論文)での著効率は、標準治療で21%、追加投与32週で59%、44週で66%とこれも有意に高かった、という結果でした。

主な副作用は貧血で、未治療患者の試験では、対照患者の13%とボセプレビル投与患者の21%では貧血のため投与量が減量されました。
副作用を考えても、それまでの治療が無効であった症例や、進行した肝臓病変を持つ患者に対しても著効を示すなどを考えると、関連記事で紹介したテラプレビルや今回のボセプレビルなどのプロテアーゼ阻害薬の登場は、HCV治療における大きな進歩だと思われます。

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