デュシェンヌ型筋ジストロフィー患者に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドの効果

Systemic Administration of PRO051 in Duchenne’s Muscular Dystrophy

以下は、論文要約の抜粋です。


背景:デュシェンヌ型筋ジストロフィー患者に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドPRO051の局所筋肉内投与が、ジストロフィン遺伝子エクソン51のプレメッセンジャーRNAのスキッピングを誘導し、筋線維膜に新しいジストロフィン分子を発現することは、以前に報告されていた。今回の第1–2a相の臨床試験では、PRO051の全身投与の安全性、薬物動態、分子レベルと臨床レベルでの有効性の確認を目的とした。

方法および結果:患者12人を対象に、ヌクレオチドPRO051を皮下腹腔内注射により、5週間投与した。PRO051の循環血液中での半減期は、29日だった。1kgあたり2mg以上の投与により、エクソン51の特異的なスキッピングが認められた。12人中10人の筋線維の約60-100%に新たなジストロフィンが発現し、この発現は容量依存的で最高で正常筋組織の15.6%にまで達した。12週間の延長投与後、6分間歩行試験で平均35.2±28.7mの改善を認めた。重篤な有害事象は見られなかった。

結論:全身投与されたPRO051は、デュシェンヌ型筋ジストロフィー患者に対して容量依存的な分子レベルでの効果を示し、12週間の延長投与により6分間歩行試験での軽度の改善が認められた。


筋ジスのDNA治療成功 神戸大、患者が退院

2003年12月3日の記事です。以下はその抜粋です。


神戸大医学部の松尾教授らは、デュシェンヌ型筋ジストロフィー患者に対する合成DNAを使った世界初の治療について、遺伝子の働きに変化がみられ効果が確認されたと発表した。患者は副作用もなく、同日退院した。松尾教授は「治療はほぼ成功したといえる」と話している。

患者は小学4年男児(10)。筋肉を形作るタンパク質「ジストロフィン」をつくる遺伝子が欠けているため、人工合成したDNAを投与したところ、リンパ球で一部の遺伝子の作用が改変された。松尾教授は「筋肉での検査結果はまだ出ていないが、同様の効果があるのは間違いない」と話し、合成DNA治療で正常なものとほぼ同じ機能を持つジストロフィンをつくらせ、症状の緩和が期待できるとしている。


松尾先生ご自身が書かれた詳しい説明が神戸大のサイトにアップされています(説明をみる)。この説明をみると、神戸での遺伝子治療は、エクソン51ではなくエクソン19が異常な「神戸型」というタイプの治療である以外は、上記の論文と非常に良く似た仕事であることがわかります。しかし残念なことに、上記論文には松尾先生らの論文はまったく引用されていません。

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