Pioglitazone for Diabetes Prevention in Impaired Glucose Tolerance
以下は、論文要約の抜粋です。
背景:耐糖能異常は、心血管疾患と2型糖尿病の発症率の上昇に関連する。これらを予防あるいは遅延する可能性のある治療介入は臨床的に非常に重要である。
方法:ピオグリタゾンが、耐糖能異常をもつ成人の2型糖尿病リスクを減らせるかどうかを調べるために、ランダム化二重盲検プラセボ対照試験を行った。602名の患者をピオグリタゾン群またはプラセボ群にランダムに分けた。追跡期間中央値は2.4年だった。空腹時血糖を3ヶ月ごとに測定し、経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)を年に1回行った。糖尿病への転換は、検査を繰り返して確認した。
結果:2型糖尿病の年間発生率はピオグリタゾン群で2.1%、プラセボ群で7.6%であった。耐糖能が正常化したのは、ピオグリタゾン群で48%、プラセボ群では28%だった。ピオグリタゾンによる治療は、空腹時血糖値(8.1mg/dL対11.7mg/dL)、食後2時間血糖値(15.6mg/dL対30.5mg/dL)、HbA1c値(0.04%低下対0.20%上昇)、それぞれの有意な低下と関連していた。
さらに、ピオグリタゾン治療は、拡張期血圧の低下(2.0mmHg対0.0 mmHg)、頸動脈内膜中膜肥厚度の低下(31.5%)、HDL値の上昇(7.35mg/dL対4.5mg/dL)と関連していた。体重増加は、ピオグリタゾン群でプラセボ群と比べて大きく(3.9kg対0.77kg)、浮腫の頻度が高かった(12.9%対6.4%)。
結論:ピオグリタゾンは、耐糖能異常から2型糖尿病へ転換するリスクを72%低下させたが、有意な体重増加と浮腫の発現を伴った。
対象となった「耐糖能異常を持つ成人」とは、18歳以上、1回OGTT2時間値が140-199mg/dL、BMIが25以上、空腹時血糖値が95-125mg/dL、かつ他の糖尿病リスクファクターを1つ以上有する患者です(試験途中で少し変更がありました)。
このような耐糖能異常の場合、既にβ細胞機能の80%以上が失われ、10%以上の患者で糖尿病性網膜症や末梢神経障害が認められるので、治療して本物の糖尿病へ進行するのをくい止めるべきであると、研究者らは主張しています。
上記のように、ピオグリタゾン(アクトス®)投与群では平均3.6kgの体重増加が認められます。普通に考えるとこれは良くない効果だと思われるのですが、論文によると、体重が増加すればするほどβ細胞機能とインスリン感受性が改善し、さらにHbA1c値も減少していたそうです。体重と逆相関?うーん
耐糖能異常から2型糖尿病へ転換するリスクを、メトホルミンは31%、他のチオグリタゾン系薬物は52-62%、生活改善は58%低下させると論文には書かれています。これらは同じ条件で比べられた結果ではないので、単純に72%のピオグリタゾンがベストだとは言えないでしょう。
以上の結果から、耐糖能異常があれば、まず生活改善、それでも検査データが改善しなければ、薬物治療したほうが健康には良さそうです。このような論文を根拠にピオグリタゾンの保険適応が広がれば、研究を助成したタケダは喜ぶでしょうが、保険財政はますます苦しくなりそうです。
コメント