以下は、記事の抜粋です。
遺伝性の腎臓病のマウスから作製したiPS細胞が増殖するときに病気の原因遺伝子を自ら修復するケースがあることを、京都大の多田准教授らが突き止めた。遺伝性疾患の患者のiPS細胞を培養して、遺伝子操作に頼らずに移植治療する新たな可能性を示す成果で、米科学誌プロスワンで2月10日発表した。
iPS細胞は、初期化前の細胞の遺伝情報がベースになる。遺伝性疾患の患者から作ったiPS細胞は病気の原因も引き継ぐ。再生医療のため培養して移植するためには、ウイルスなどで正常な遺伝子を導入し修復することが必要と考えられていた。
多田准教授らは、遺伝子の片方の変異が原因で腎臓に嚢胞ができる難病「常染色体優性多発性嚢胞腎」を発症させたマウスからiPS細胞を作製。1個から約1万個に増やすと、遺伝子異常のないiPS細胞が1個見つかった。細胞分裂時に原因遺伝子が壊され、片方の正常な遺伝子がコピーされることで修復したらしい。
このiPS細胞を受精卵に注入して誕生したマウスの腎臓は正常に働いた。
元論文のタイトルは、”Cure of ADPKD by Selection for Spontaneous Genetic Repair Events in Pkd1-Mutated iPS Cells”です(論文をみる)。
難病情報センターによると、多発性嚢胞腎とは腎臓に嚢胞が多発し、腎臓の働きが徐々に低下していく病気で、常染色体優性遺伝を示します。日本国内の患者は約30,000人とされています。しかし、医療機関にかかっていない人を全て含めると、10万人~20万人の患者がいると推測されるそうです。
多発性嚢胞腎の病態を引き起こす遺伝子は二つあり(PKD1、PKD2)、各々Polycystin 1とPolycystin 2 というCa透過性陽イオンチャネルをコードしています。これらは尿細管細胞繊毛に共存し、尿細管液の流れを感知して細胞内にCa++イオンを流入させる働きをしているそうです(記事をみる)。
初期には無症状で、腎機能障害の進行に伴って、食欲低下、疲れやすい、だるい、夜間多尿、さらには息切れなどが出現します。受診の原因としては、肉眼的血尿(31%)、側腹部・背部痛(30%)が多い自覚症状です。また高血圧を合併することが多く、脳出血なども通常より高い頻度で起こるそうです。60歳頃までに約50%の人が腎不全になり、透析が必要になります。
本論文は、多発性嚢胞腎の治療というよりも、多田准教授が記事で書いているように、「染色体の片方に原因がある優性遺伝病であれば、患者由来のiPS細胞でも病気の原因がなくなる可能性が示された。」ことが重要だと思われます。病気の原因がなくなったiPS細胞をどう使うかは、全く別の問題です。
コメント
SECRET: 0
PASS:
tak先生
お早う御座います。
何時も有益情報感謝しています。
自分は入社早々胃潰瘍で入院、その際腎機能悪く退院が遅れました、以来腎には神経質。
時代が進み企業がドックを開始した40代、血清CREが長年1.0超えで気になってました。
半信半疑ですがリタイヤ後、降圧治療薬にARBが追加、以降徐々に改善、先だっては短期で二機関で検査の機会あり、何れも08未満。
ARBはほんとに腎機能を改善するようです。
今はブロプレス8mg。
それでは今日も研究、講義、お疲れ様です。
taniyan