明治の「セシウムミルク」問題:お母さんはこれを読んで安心し、マスメディアは反省してください

明治の粉ミルク問題、「いじめ社会」は作っちゃいけない

以下は、記事の抜粋です。


明治のフォローアップミルク「明治ステップ」(850g缶)の一部の製品から放射性セシウムが検出された。マスメディアも大々的に取り上げている。不安に陥っている人も多いだろう。でも、誤解が誤解を呼んで「けしからん」になっている面もあるように思える。事実関係を整理しておきたい。

(1)取り替え対象の「明治ステップ」は、フォローアップミルク
粉ミルクには、母乳代替製品として位置づけられる「乳児用調製粉乳」と、生後9カ月頃からの乳幼児期に合わせて、離乳食からではとりにくい鉄分やカルシウム、ビタミンなどを配合した「フォローアップミルク」の2種類がある。今回の対象はフォローアップミルクで、母乳を代替する製品ではない。こうした事実をおろそかにしたまま「赤ちゃんに欠かせない」などと表現するメディアは要注意だ。

(2)法律違反ではない
明治によれば、検出数値は、22~31Bq/kg。牛乳・乳製品の暫定規制値は200Bq/kgなので、法律違反ではなく、回収義務もない。明治の自主的判断で、「取り替え」に至った。

(3)放射性セシウムの摂取量はどれくらい
今回、最も大きかった検出数値は31Bq/kg。ステップは、水に28gを溶かして200mlに調整するので、200mlを飲む場合の摂取量は、0.87Bqだ。フォローアップミルクを飲む量は、通常は1日に400~700ml程度飲むものとされている。したがって、問題の製品を飲んだときの1日の放射性セシウム摂取量は、1.74~3.04Bqである。

(4)リスクは大きいか、小さいか
これがどの程度のリスクであるかは、摂取するベクレル数に実効線量係数をかけて預託実効線量を算出することで、おおよそ把握できる。計算すると、ステップを溶かした200mlのミルクを飲んだ時の預託実効線量は、0.02μSvである。ステップ850g1缶で200mlのミルクを約30杯作ることができる。「取り替え」対象製品4缶を飲み尽くした時の被ばく線量は計2.4μSvである。これは、国の平時の一般公衆の年間線量限度は1mSvの0.24%である。非常に低いと言ってよいのではないか。

(5)なぜ、汚染は起きたのか、事前防止できなかったのか
明治は、熱風乾燥させた時に取り込んだ外気にセシウムが含まれていたのではないか、と説明している。「なぜ早く対応しなかったのか」と非難するマスメディアが多いが、「評論家の後だしジャンケン」のように私には見える。NPOやマスメディアに「情報隠し」と追求される前に動いた「危機管理」の結果が、今回の取り替え措置だろう。

(6)明治製品の店頭撤去は適切?
この問題を受けて、薬局などの中にはステップだけでなく、乳児用調製粉乳「ほほえみ」などの明治製品すべてを店頭から撤去する動きが出ているそうだ。これは適切とは言えない。法律違反ではなくとも、リスクが高く企業の道義的責任も重い、となると、撤去もありうる。しかし、今回のようにリスクが小さく、しかも企業が積極的に情報公開をしたのに、「店頭からの撤去」という過酷な社会的制裁を加え、母乳を代替する重要な食品まで消えては、消費者は混乱する。薬局の薬剤師は、まずは科学的な「リスク」という観点から、客にきちんと説明する義務があるのではないか。

(7)リスクの大きさを明確に伝えず「安心がほしい」 というマスメディア
新聞やテレビなどは、厚労省などの「健康影響はない」というコメントを紹介するのみで、預託実効線量などをきちんと説明していない。安全性について消費者の理解を深めようとする努力のないまま、「安心がほしい」と主張するのは、報道機関として無責任だ。(NHKニュース、西日本新聞社説など)

(8)過度の社会的制裁は、次の不正を産む
店頭からの撤去や不買運動など過度の社会的制裁は、むしろ逆効果だ。ある意味誠実に対応した企業を “いじめる”社会になってしまっては、別の問題が他社で見つかった時に「いじめられたら困る」という気分を産んでしまう。問題隠し、不正隠しにもつながりかねない。


朝日の記事も、「食品大手の明治は6日、生後9カ月以降の乳児向け粉ミルク『明治ステップ』から、1キロあたり最大30.8ベクレルの放射性セシウムが検出されたと発表した。乳製品の国の暫定規制値である1キロあたり200ベクレルは下回っているが、明治は新たな商品と無償交換する。」という文章で始まります。「生後9カ月以降の乳児向け」だけでは、母乳代替製品でないことはわかりません。

朝日の記事は、「厚労省によると、原発事故以降、粉ミルクからセシウムが検出されたのは初めて。30ベクレルを検出した粉ミルクの安全性について担当者は「飲む際にはさらに薄まる。健康への影響はないと言える」と話している。」で終わっています。これを読んで安心する人は少ないでしょう。

私の研究室の留学生の一人も、母国の両親にあずけた子供に送っているミルクが「明治」であることを心配していました。私は、精一杯科学的に説明しましたが、なかなか納得してもらえませんでした。良く聞けば、購入して送ったミルクは「取り替え」対象製品ではありませんでしたが、不安は完全には消えていないようです。

こういうものを読んで理解できる人は、はじめから騒いでないという意見もありますが、無用の心配をしているお母さんと、過度の社会的制裁が大好きなマスメディアと、事実を隠蔽せず誠実に対応した明治のために紹介しました。

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