年中無休、24時間研究中!

年中無休、24時間研究中!

以下は、記事の抜粋です。


帰宅は真夜中、週末もラボ。こうした生活を送ってこそ、すばらしい研究成果が得られるのだろうか?

ここは、真夜中のジョンズホプキンス大学コッホがん研究棟。最後に研究棟を出るのは、いつも神経外科医Alfredo Quiñones-Hinojosaの研究室のメンバーだ。ボスが、研究室のメンバーに朝6時に電話したり、夜10時までかかるような研究室ミーティングを金曜に入れたり、クリスマス休暇中でさえも仕事をするのが当然と思っているような研究室では、連休前の週末でも夜中まで仕事をするのだ。

長時間労働で有名な研究室は多々ある。私(筆者)は、どんな人間がこうした環境に魅力を感じるのか、そこで働くことがどういうものなのか、そして、長時間労働がより優れた研究成果につながるのかどうかを知りたいと思った。そこで、非常にハードワークだと評判の11の研究室に取材を申し込んだ。だが、10人の研究リーダーは私の取材を断り、「奴隷監督」のように思われるのを恐れるリーダーもいた。

しかし、11人目のQuiñones-Hinojosaはそうしたことを気にかけなかった。19歳のときにメキシコから不法入国し、カリフォルニアの農場で働いた後、米国の一流の研究病院の1つで神経外科医になるまでの立志伝は、すでに New England Journal of Medicine に掲載されたり、テレビや新聞でも取り上げられたりしている。9時から5時の働きでは、現在の地位に上り詰めることはなかったのである。

Quiñones-Hinojosaは、学部生時代も医学生時代も、研究所で1人遅くまで残って研究していた。実際、当時の生活は、週に140時間も研究に従事するというものだった。成功したのは、回復力と体力に裏打ちされたプロフェッショナル魂だと、彼自身、自負している。

そんなわけで、ハードワークにもマスコミにも抵抗感がなく、医学研究の長時間労働文化にどっぷり浸っているQuiñones-Hinojosaは、私の研究室訪問を歓迎し、「喜んで取材に応じますよ」と言ってくれた。

取材当日の朝、私は午前8時に到着した。その日の最初の手術を見学するように言われていたからだ。Quiñones-Hinojosaが前日に就寝したのは午前1時。起床は午前5時だった。手術に向かいながら、彼は研究室への階段を上がる22歳の学部生Lyonell Koneを追い越した。そして足を止めることなく、肩越しに、「もう10時じゃないか。10時に来て、いったい何をやるんだい?」と言った。彼は、研究室で働くメンバーが自分に恐れをなしていることもよくわかっており、それをフル活用している。

Quiñones-Hinojosaには、研究室のモチベーションを維持するための秘策がもう1つあった。折をみて、がん患者やその家族にミーティングに加わってもらうのだ。メンバーの一人は言う。「患者さんが『私は余命6か月です』と言うと、みんなほんとうに衝撃を受けるんです。」

研究室がこれほど猛烈なのにもかかわらず順調に動いているのは、仕事ぶりや性格的な特徴を見抜く彼の眼力が、その理由の1つに挙げられるだろう。MITで戦略を教える准教授Pierre Azoulayは、「細心の注意を払って自分たちの基準に合う部下を選ぶようにしないと、おそらく悪影響が現れるでしょう。私は、ほとんどの研究リーダーはこうした慎重な人選をしていないと感じています。」と話す。

もう1つ重要なのは、研究者の自主独立性である。彼の研究室のメンバーの多くは、それぞれ自分のプロジェクトを進め、助成金の申請書類を自分で作成している。彼らは自分の研究に、自分自身で執り行っているという自負を持っているのだ。自主独立性は、研究者の満足感と生産性を維持するのに欠かせないのだとAzoulayは話す。「独立性を侵害する研究リーダーは問題にぶつかって苦労することになるでしょう。」

果たして、長時間労働と私生活の犠牲は、研究者にとって、また科学にとって、見合った価値があるのだろうか。2004年にウェイン州立大学の社会学者Steven Stackは、学術研究機関で働く科学者や技術者1万1231人を対象に、調査データを解析して結果を発表した。それによると、平均的な研究者の労働時間は週に約50時間で、一般に、費やす時間が増えるほどその研究者の発表論文の数も増えていく。

Quiñones-Hinojosaの研究室はそのパターンに当てはまるようだ。彼が2005年に研究室を立ち上げてから発表した論文は113本。大部分はがんの臨床転帰に関する小規模でドライな研究から生まれたものだが、27人が従事するウエットな研究でも、29本を発表している。ジョンズホプキンス大学医学部の研究者が教授に昇格するには平均15年かかるという。しかし彼は今年、わずか6年で教授職に推薦された。


原文は上の抜粋よりもはるかに長文です。以下に”slave-driver”として成功する条件を抽出してみました。

1)ボス自身がハードワークによって成功した経歴を持つ。
2)社交的かつ魅力的、周囲の人への影響力を持ちながらも、謙虚さを見せる。
3)研究室メンバーが自分を恐れていることをよく理解し、それをフル活用している。
4)メンバーに自分たちの仕事がどんなに緊急で切実なものであるかを確認させる。
5)細心の注意を払って自分の基準に合う部下を選ぶ。
6)研究室メンバーの自主独立性を尊重する。
7)多くの論文を書く。

チェックしてみましたが、私自身が合格していると思われる条件は、7つの中の半分以下です。今さら変えるわけにも行かないので、現状維持で行きたいと思います。しかし、我々の業界では、ハードワークが成功の「必要条件」です(残念ながら、「十分条件」ではありません)。成功したい人は、ハードワークしましょう。

写真中央がAlfredo Quiñones-Hinojosa氏です(Natureより)

コメント

  1. taniyan より:

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    tak先生
    お早う御座います。
    何時も有益記事感謝申し上げます。
    自分も現役時代、好きなテーマに取り組んでいるときは時間も、疲れも感じず没頭。
    研究者、学者、superdoctorなんて多分そうではないでしょうか。
    tak先生もそんな存在な立場ではないでしょうか。
                       taniyan

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