現時点ではイベルメクチンを積極的に使用する根拠がない

イベルメクチン論文は捏造? プレプリントの闇
以下は、記事の抜粋です。


2021年7月15日に、Nick Brown氏のブログで興味深い記事が公開されました。彼は数字から科学的詐欺を暴くプロですが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するイベルメクチンの論文が捏造ではないかと指摘したのです。

問題となった論文は、Research Squareというプレプリントサーバーにある以下のものです。

■Elgazzar, A, et al. Efficacy and safety of Ivermectin for treatment and prophylaxis of COVID-19 pandemic. Research Square, 100956.

論文は捏造を指摘され、既にResearch Squareによって撤回されています(上記は、撤回される前のバージョン3にリンクを貼っています)。プレプリントとは、正式な論文として発表される前段階の草稿のことを指し、これを掲載しているウェブサイトをプレプリントサーバーと言います。

このプレプリント論文は、抗寄生虫薬のイベルメクチンを投与することで、ヒドロキシクロロキン+標準治療と比較して死亡率、PCR陰性化までの期間、回復までの期間が有意に改善したというものです。この論文の問題は、既に多くの引用を得ているところにあります(6カ月で引用数は30とのこと)。

しかし、以下のように捏造が疑われる根拠がたくさんあったとBrown氏は指摘しています。

・コピペが多く、同一患者のデータをそのまま複数貼り付けた部分が多数見受けられる
・生データと論文データが一致していない
・イベルメクチン非投与群で死亡者に関する部分が改ざんされている
・600人中410人の年齢が偶数であり、偶然では片づけられない偏りが生じている
・48歳の患者さんが34人、58歳の患者さんが31人いる一方で、50歳の患者さんが3人、53歳の患者さんが4人しかいない。天文学的に低い確率の事象である
・数字のゼロにしなければならないところが、アルファベット小文字の「o」になっている
・フェリチンの下1桁が「3」になっている症例が3つしかない(確率的には0~9で均等になるはずだが、この偏りが起きるのは100億分の2の確率である)
・ヘモグロビンの下1桁が2~5のものが82%であり、偶然では片づけられない偏りである
・Tableの結果がデータと全く一致しない
・連続変数にカイ2乗検定を行っており、検定自体を理解していない

イベルメクチンがCOVID-19に有効であるとする以下のメタアナリシスは、Elgazzarらの論文を解析に使用しているため、大きな有意差をもって「イベルメクチンが効果あり」という結論になっています。例えば、以下のメタアナリシスでは、21個のプレプリント論文が引用されています。
■Bryant A, et al. Ivermectin for Prevention and Treatment of COVID-19 Infection: A Systematic Review, Meta-analysis, and Trial Sequential Analysis to Inform Clinical Guidelines. Am J Ther . 2021 Jun 17. doi: 10.1097/MJT.0000000000001402.

一方、イベルメクチンがCOVID-19に有効とは言えないと結論付けているCIDの以下のメタアナリシスでは、Elgazzarらの論文を解析に組み入れていません。このメタアナリシスでは、4報のプレプリント論文が引用されています。
■Roman YM, et al. Ivermectin for the treatment of COVID-19: A systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Clin Infect Dis . 2021 Jun 28;ciab591. doi:10.1093/cid/ciab591.

イベルメクチン自体の有効性の検討は複数の研究グループが続けていますので、まだこの薬剤が無効と結論付けられたわけではないかもしれません。実際に、上記のRomanらのメタアナリシスについて「ベイジアンメタアナリシスを行えばイベルメクチンは有効」とする以下の論文が、これもまたプレプリントとしてアップロードされています。
■Neil M, et al. Bayesian Meta Analysis of Ivermectin Effectiveness in Treating Covid-19 Disease. July 2021. doi:10.13140/RG.2.2.31800.88323.

RomanらもNeilらも、Research Squareにある論文を1つ入れていますが、その論文データが「少し偏り過ぎではないか」という意見が出てきています。イベルメクチンについては日本でも臨床試験が進んでおり、いずれにしてもここから先の論争は見守るしかありません。

ただ、臨床医としては「まだ効果がないかどうか分からないから、希望を持ってイベルメクチンを使おう」ではなく、「現時点ではイベルメクチンを積極的に使用する根拠がない」というのが科学的見地に立った正しい落としどころではないかと思っています


私の考えも最後の下線部と同じです。以下は、コロナ患者の診療にイベルメクチンを使っている長尾クリニックの長尾和宏氏のブログのイベルメクチンについての記載です(ブログをみる)。


イベルメクチンは効くの?

それは、よく分からない。正直、効いた!と思ったことはない。

あと、どれだけの量を出すの?多くの医師からも問い合わせを頂く。当院では疥癬に使う量を使っている。小柄な高齢者には3錠で若い方には4錠。これでいいのかどうか、僕は分からない。

僕にとってのイベルメクチンは、おまじないだと思っている。少なくとも悪さはしていないようだし、エビデンスもあるし。スミマセン。頼りない答えで。僕は、万一、亡くなったら絶対に後悔するだろうから開業医でも、保険診療で使えるものは使っておきたい。

幸い、陽性者は減っているので、ワクチン接種に専念できている。あと、40日間は、通常診療をしながら、ひたすらワクチンを打つ。

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