未来の医師に求められること ~AIの進歩と少子高齢化のインパクト~

未来の医師に求められること~AIの進歩と少子高齢化のインパクト~
以下は、記事の抜粋です。


筆者は医師37年目の一臨床医であり、30数年間の血液内科診療、レジデント教育、終末期医療に続いて、昨年から人間ドック診療を始めた。筆者の限られた経験をもとに、未来の医師について予測してみたい。

AIが今後、驚異的に進歩することで、AIが十分に賢くなって自分自身よりも賢いAIを作るようになり、人工的知性が人類全体の知性の総和を超越するというSFのような世界を「シンギュラリティ(技術的特異点)」と言う。この分野の世界的権威であるレイ・カーツワイル氏は、2045年頃にシンギュラリティを迎えると言っている。もう30年もない。

10数年後、AIは医療現場で、少なくとも①画像や臨床検査の診断、②予後予測(疾病発症率、健康寿命、寿命予測)、③治療法の選択の3つの分野で大きな役割を果たしているだろう。

未来の医師に必要なのは、コミュニケーション力と大局的判断である。大量の情報を自分の脳に詰め込むのは時代遅れになる。細かな情報の記憶、統計的処理などは、AIに任せればよい。

全人口の65歳以上の割合である高齢化率は、現在25%を超えているが、2025年には30%、2060年には40%になる。問題は高齢者の激増だけではない。高齢者がさらに高齢化し、出生数が進行的に減少して社会を支える勤労世代(20~64歳)が激減することである。

したがって、生命予後の改善以上に、QOL(Quality of Life)の改善やQOD(Quality of Death)の改善が大切になる。

高齢者のQODの改善のためには、本人の意向を尊重することが基本になる。家族ではなく本人が、「この先、自分はどうしたいのか」「食べられなくなったらどうしたいのか」「どこで暮らしたい(亡くなりたい)のか」「最期の延命処置はどうしてほしいのか」を決められるように支援することである。高齢者の人生の最期に向けた意思決定支援が重要になるだろう。

日本人の平均寿命は、男性80.5歳、女性86.8歳である。健康寿命は、男性71.2歳、女性74.2歳である。したがって人生の最期には、男性約9年、女性約13年の「日常生活に制限のある期間」が存在する。未来の医師には、健康寿命を延ばすための予防医療が求められる。


「予後予測」のところで書かれていた「40歳男性。アルコール多飲、重喫煙があり、肥満症、高尿酸血症、糖尿病、脂肪肝、睡眠時無呼吸症候群などの問題を抱えている」患者に対するAIがするであろう予後予測が、「あなたが今の生活習慣を続ければ、10年以内に心筋梗塞を90%、脳梗塞を80%の確率で発症します。70%の確率で、健康寿命は約10年、生存期間は約20年と予測されます」と出してくれるのは非常にありがたいと思いました。

このような予後予測を突き付けられれば、患者が「元気で生きられるのがもう10年しかない! これは大変だ。酒は減らそう。禁煙もしなければ」となるかどうかは別として、患者への説明がとても楽になると思います。私は、できるだけ早いAIの臨床現場への導入を望んでいます。

著者が書いているように、高齢化に伴って生命予後の改善以上にQOL(Quality of Life)の改善やQOD(Quality of Death)の改善が大切になる可能性はあると思います。しかし、健康寿命を延ばせば「少子超高齢化」に対応できるのでしょうか?もちろん、健康寿命を延ばす努力は重要だと思いますが、医学の発達とともに、平均寿命はさらに延びて、結局、健康寿命との差は変わらない可能性が高いです。そのような「超高齢者」を支える力が未来の医学、医療あるいは医師にあるかどうか、私には確信が持てません。

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