以下は、記事の抜粋です。
本稿では環境省、および福島県が計画中の県民ゲノム調査を例に考えてみたい。県民健康調査の一環として行われる事業である。
この件が初めて公になったのは8月30日だ。細野豪志・環境大臣(当時)が「原発事故による被曝が人の遺伝子に与える影響について調べるため、福島県民の全ゲノム情報の解析調査に着手する」と発表した。さらに、9月6日、環境省は、来年度から5年間、福島県内の親子500組(父母と子供で合計1,500人)のゲノム情報を解析するため、11億9,200万円を概算要求に計上することを明らかにした。
筆者が中村祐輔・シカゴ大学教授と宮野悟・東大医科学研究所教授に、このニュースを伝えたところ、強烈な回答が返ってきた。
中村教授は「これが事実なら世界の笑いものになります。たとえ異常が起こったとしても、細胞ごとに変異は違いますし、普通にゲノムDNAをシークエンスしても異常は絶対に見つかりません。シークエンサーのエラー率を考えれば荒唐無稽な計画です。福島にお金を落とす口実としても、あまりにも、恥ずかしい発言です」とコメントした。さらに、別のメディアで宮野教授も「通常の変異が原発事故と結びつけられ、差別や偏見を生む恐れがある」と問題点を指摘した。いずれのコメントもマスコミやネットメディアが引用したため、ご存じの方も多いだろう。
なぜ、専門家なら一瞬で問題と分かる企画に、膨大な予算が注ぎ込まれるのだろうか。まっとうな研究者は関与していないのだろうか。
こんなことを続けていると、学界はやがて社会の信頼を失う。浜通りの住民は「こんな調査を進めると、福島県に風評被害をまき散らかすだけですね。われわれはモルモットのような存在です」と嘆く。
福島県の県民健康調査は誰のためのものだろうか。答えは自明だ。いま、研究者の自律が問われている。
以前にブログでとりあげた時には、まさかこのような調査が実際に行われることになるとは想像もしませんでした。しかし、上の上 昌広 氏の記事をみると、驚いたことに概算要求に計上されたようです。財務省には、是非切り捨てて欲しいと思います。
それにしても、福島県立医大のしていることは、「焼け太り」を超えて「火事場泥棒」です。これだけの非難を受けてもまだ11億9,200万円のおこぼれにしがみつくのであれば、「まっとうな研究者は」いないと評価されても仕方がないでしょう。
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