2011年薬業界10大ニュース‐困難に立ち向かい次なるステージへ
薬事日報がまとめた昨年の10大ニュースから2つを抜粋してコメントします。
製薬協が透明性指針‐支払い金銭情報公開へ
●日本製薬工業協会は3月、医療機関や医師等に支払った金銭の情報を開示する「企業活動と医療機関等の関係の透明性ガイドライン」を公表した。研究費、臨床試験費や寄付金、講師への謝礼、講演会費用などが対象。
●今回の指針は、記載が望ましい公開対象に研究開発費等、学術研究助成費、原稿執筆料等、情報提供関連費などを挙げた。奨学寄付金や財団等への一般寄付金、学会寄付金・共催費について、大学や教室名、学会名と金額を公表するほか、原稿執筆料等は支払った講師謝礼や監修料などについて、個人名まで開示する。接待費等も年間総額を公開することを求めた。
●透明性指針は、世界的な情報開示の流れに沿ったもので、企業活動を大きく変えるインパクトを持つ。医師・研究者側も歩調を合わせ、日本医学会は利益相反指針で研究者に金銭受け取り情報の開示を求めている。
友人が、「TPPに参加すると、現在米英で取り決めのある『接待・贈収賄に関する取り決め』が押し付けられるようになる」と言っていました。大学教員による講演会を製薬企業がスポンサーになって後援するというような機会も減るのでしょうか?企業からの奨学寄附金や寄附講座などにも関連する話だと思います。大学と企業がwin winの関係を利益相反なしにできるシステムを確立する必要があります。
イノベーションの推進‐「停滞許されない」政策
●政府は1月7日、新成長戦略に基づいて産学官のオールジャパンで日本発の医薬品、医療機器、再生医療を生み出すため、内閣官房に「医療イノベーション推進室」を設置した。室長には、東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センター長の中村祐輔教授が就任し、研究開発を省庁横断的にバックアップする体制が整った。
●推進室では、創薬スクリーニング、創薬化学、薬剤開発を推進する機能を持った「創薬支援機構」構想や、癌ワクチン、核酸医薬品、再生医療製品などの評価方法の標準化を行う「先端的医薬品医療機器評価技術開発センター」を創設する方針を打ち出し、予算要求への関与にも意欲を示していたが、1年足らずで中村室長が辞任する事態となっており、実現の可能性は不透明な状況。
日本人の平均寿命が生物学的限界に急速に近づいている現在、産官学をあげて、いったい何を創薬すれば医療イノベーションが推進できるのでしょうか?政策の名前を新しくしただけで、実際にお金が行く先はこれまでと同じでしょう。中村さんは、「イノベーション」から程遠い実態に嫌気がさしてアメリカへ逃げるのかもしれません。あるいは、彼が享受してきたこのような体制の崩壊を予知したのかもしれません。
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