蚊を「煙に巻く」におい分子を発見、マラリア予防に期待大

蚊を「煙に巻く」におい分子を発見、マラリア予防に期待大

以下は、記事の抜粋です。


蚊を寄せ付けない「におい分子」を特定したと、カリフォルニア大学などの研究チームが6月1日発表した。革新的で安価な防虫剤につながる可能性がある。現在、一般的な防虫剤化学成分は「DEET」だが、熱帯地方の貧困国にとっては高価な点や、何回も塗布する必要があること、蚊が耐性を持ち始めているなどの欠点があった。

研究チームは、メスが病気を媒介する3種の蚊(ハマダラカ、ネッタイシマカ、ネッタイイエカ)を分析し、口の近くにあるアンテナ状のCO2受容細胞をかく乱する「におい分子」を特定。次に、小屋の中にCO2とこの「におい分子」を噴霧する小規模な実験をケニアで行って、「におい分子」に蚊をはねつける効果があることを確認した。

ハエの受容細胞は、CO2を感知すると脳に信号を送り、CO2の発生源めがけて飛翔し、食事(血)にありつく。この時、熱センサーと目も使っていると考えられる。

今回の結果について米国立衛生研究所のMark Stopfer氏は、「蚊に対する有望な防御策が目の前に開けた」と述べながらも、「蚊は人間の汗や皮膚のにおいにも引き寄せられる。また、開発された化学物質の人体への安全性テストは一度も行われていない」と注意を促している。


元論文のタイトルは、”Ultra-prolonged activation of CO2-sensing neurons disorients mosquitoes”です(論文をみる)。

実験で同定された「におい分子」とは、2,3-ブタンジオン(2,3-butanedione)だそうです。2つのアセチル基がカルボニル基の炭素同士で結合したジケトンの一種で、化学式 C4H6O2 で表されます。醸造業界ではジアセチル(diacetyl)とよばれるようです。

2,3-ブタンジオンについてWikiでは、「酵母や乳酸菌などの微生物による発酵の際に生成するほか、コーヒーなどの原料の加熱処理の際に炭水化物の分解によって生じる場合がある。」、「発酵バターにおけるジアセチルの最適濃度は2mg/Lとされている」、「赤ワインでは濃度4mg/L程度であれば香りの成分として有用である」などとありますので、それほど毒ではないと思うのですが、Natureのハイライトには「その性質からヒトでは使用できない」と書かれています。良くわかりません。

論文のデータをみると、2,3-ブタンジオンを使っても「煙に巻かれない」蚊がまだ1/3~1/4ぐらい残っています。これの方が、むしろ問題のような気がします。
メスの蚊の頭部にある嗅覚器官の写真。赤い線はCO2感受性ニューロンからの電気生理学的記録の例。「におい分子」の分子模型もみえます(Live scienceより)。

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