舛添氏の言うように病院内クラスター発生は「気の緩み」によって起こるものなのか 一医療従事者からの反論
以下は、記事の抜粋です。
元東京都知事の舛添要一氏が、病院で新型コロナウイルス感染症のクラスターが発生したことに苦言を呈したことが報道されています。
「順天堂大練馬病院で、医師、看護師、患者など40人が新型コロナウイルスに感染。都立広尾病院でも同様に16人が感染、うち患者一人は死亡」「この期に及んで、病院で院内感染が拡大するというのは、信じがたいことである。コロナに対する気の緩みを象徴するような出来事だ」
元厚生労働大臣という経歴も持つ方が、このような医療現場を全く理解していない発言をされたことを大変残念に思います。果たして病院での新型コロナクラスターは医療従事者の「気の緩み」によって起こるものなのでしょうか。
新型コロナは無症状者からも感染する
この感染症がやっかいなところは、症状から感染者を検出するのが困難なところにあります。病院に来る方に対して、入る前に体温測定や咳などの呼吸器症状の有無の確認を行っている医療機関がほとんどですが、このようなスクリーニングを行っても新型コロナの感染者を100%見つけることはできません。
新型コロナ患者の中には発熱や呼吸器症状の乏しいだけでなく、全く症状のない無症候性感染者が一定の割合(最大95%とも言われています)で存在するためです。また感染者が症状が出る前に病院内に入って来ることも十分に考えられます。
新型コロナでは症状がない人も感染を広めるため、焦点を絞った感染対策ができず「誰が新型コロナか分からない状態」で診療を行わなければなりません。
第2波の流行初期には、「盲腸で入院したのにコロナ陽性」「骨折で入院したのにコロナ陽性」というような、コロナ以外の理由で入院した患者さんが実はコロナに感染していたという事例も見られました。このように、他の疾患の患者として紛れて病院内に入る新型コロナ患者を100%見つけることは、特に流行期においては極めて困難です。
「入院患者全員にPCR検査をすればいいじゃないか」というご意見もあるかもしれませんが、予定入院はともかく緊急入院する患者も含め全入院患者にPCR検査を行って陰性を確認してから入院という方針を取れるのはキャパシティのあるごく一部の病院のみです。
PCRは万能ではない 陰性例から広がった事例も
また、PCR検査を行えば安心、というものでもありません。日本国内でもPCR検査陰性だった症例から感染が広がりクラスターとなった病院も報告されています。舛添理論では、この病院も気が緩んでいるということになるのでしょうか。
新型コロナのPCR検査は、感染した時点からのタイミングにもよりますが、感染してすぐにPCR検査をしても100%陰性になりますし、一番良いタイミングで検査をしても22%は偽陰性(本当は新型コロナに感染しているのに陰性と出てしまう)になります。
PCR検査が陰性でも新型コロナは否定できない、と言うのは簡単ですが、PCR検査の結果にかかわらず患者全員に個人防護具を着用して診察するのは現実的に無理というものです。病院内での感染を100%防ぐことは極めて困難であることがお分かりいただけるでしょうか。
大事なのは医療機関への批判ではなく、今後の発生予防と支援
クラスターが発生した病院を批判することは生産的ではありません。大事なのは「何がクラスター発生に繋がったのか」を検証し、事実を積み重ねて共有していくことです。また、クラスターが発生した病院は提供する医療の規模を縮小せざるを得ず、場合によっては地域医療の崩壊を招くことにも繋がりえます。医療者の派遣や経済的な支援などを含めたクラスターが発生した病院への支援体制の構築も今後望まれます。
まったくその通りです。トランプ大統領も症状のあった側近から感染したという報道が多いですが、無症状の支持者からかもしれません。
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