カフェインがADCY5遺伝子に関連するジスキネジアを改善する

筋肉のけいれん抑制にコーヒーが有効、「うっかり」が裏付け実験に
以下は、記事の抜粋です。


フランスに住む11歳の少年には、意思とは無関係に筋肉が動く「ジスキネジア」の症状がある。これは、ADCY5遺伝子の変異によって引き起こされる珍しい症状だ。少年の両親は、エスプレッソコーヒーを1日に2杯飲ませることで発作を抑制できると知り、そうしてきた。だが最近、誤ってカフェイン抜きのコーヒーを購入してしまい、少年にジスキネジアの症状が再び表れた。

4日間苦しみ続けた息子を病院に連れて行った両親は、そこで初めて自分たちの誤りに気付いた。再びカフェイン入りのコーヒーを飲ませるようになると、少年の症状は緩和されたという。

パリにあるPitie-Salpetriere病院の医師で、この少年の症例に関する論文の主執筆者であるEmmanuel Flamand-Roze氏は、「医学史に刻まれる偶然の大発見だ」と述べた。

今回のケースでは、偶然行われた試験によって、カフェインがジスキネジアの治療に効果的であることが証明された。

ADCY5遺伝子は、およそ100万人に1人の割合で発症するとされ、これまでに治療法は確立されていない。

医師らの間では長年、濃いコーヒーに筋肉のけいれんを鎮める効果があることが知られていたが、こうした症状は非常にまれなため、試験薬と偽薬を使った比較試験を行うのに十分な数の被験者を集めることできないのが現状だ。

またこうした試験では、偽薬を与えられた被験者につらい症状が出ることが予想されるため、倫理的な問題が生じる可能性もある。


元論文のタイトルは、”Caffeine and the Dyskinesia Related to Mutations in the ADCY5 Gene”です(論文をみる)。

ADCY5遺伝子は、細胞膜に結合したadenylate cyclase type 5という細胞内情報伝達物質のcyclic AMPを産生するタンパク質をコードします。カフェインは、cyclic AMPの分解酵素を阻害して細胞内のcyclic AMPを増やすので、ADCY5遺伝子に関連するジスキネジアを改善するのかもしれません。

ADCY5遺伝子変異は、小児期発症の舞踏運動の原因となり、表現型としては発作性舞踏運動、ジストニア、ミオクローヌス、低トーヌスを示します(下の動画を参照してください)。治療としては、ベンゾジアゼピンが有効だとされています。これにカフェインが加わるかもしれません。

ADCY5-related dyskinesia

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