以下は、記事の抜粋です。
血管を詰まらせる血栓をできにくくして脳卒中を予防する新しい抗凝固薬の製造・販売が1月21日に承認され、今春にも国内で発売される見通しとなった。
従来薬「ワーファリン」は、納豆を食べると効かなかったが、新薬は食べ合わせなどの影響はない。
独製薬大手べーリンガーインゲルハイムが開発した「プラザキサ」(成分名ダビガトラン・エテキシラート)。血液を固めるトロンビンという酵素に直接作用する。心臓病の一種の「心房細動」の患者が1日2回服用すると、従来薬よりも35%、脳卒中や全身性塞栓症の発症が減る。
1950年代から使われているワーファリンは、心房細動後の脳卒中予防のほか、人工関節や人工心臓弁の装着など血栓ができやすい手術の後に欠かせないが、血液中の凝固成分を増やすビタミンKの作用を抑える薬なので、納豆やクロレラなどビタミンKを豊富に含む食品は禁忌だった。
ワルファリンは抗凝固薬として脳梗塞の予防などに用いられています。脳梗塞の発症は、心房細動などの「心原性」と「非心原性」の2つに大別されます。非心原性にはアスピリンやクロピドグレル、シロスタゾールなどの抗血小板薬が、心原性には抗凝固薬の投与が推奨されています。
これは、心原性脳塞栓症については、大規模臨床試験の結果から、抗凝固療法の効果が抗血小板療法の効果を上回ることが明らかにされているためです。
ダビガトランは、経口直接トロンビン阻害剤で、血液凝固カスケードの下流にあるトロンビンを阻害して抗凝固作用を発揮します(下図参照)。NEJM誌電子版に報告された大規模臨床試験によって、ワルファリンの代替として有用であることが明らかになりました(論文をみる)。
ワルファリンは、記事にあるように食べ物や他の薬物の影響を受けやすい上に、個人による変動が大きいため、プロトロンビン時間国際標準比(PT-INR)をモニタリングしながら、至適用量を決める必要があります。
一方、ダビガトランは治療域が広く、凝固モニタリングの必要性がないことや、肝臓の薬物代謝酵素の影響を受けにくいこと、早期の効果発現などの点で明らかにワルファリンよりも優れています。ワルファリンは安価ですが、凝固モニタリングの費用などを考えると、経済的にも優れているかもしれません。
一昨年発刊された「脳卒中治療ガイドライン2009」では、心房細動を原因とした脳梗塞が含まれる心原性脳塞栓症については、ワルファリンが第一選択薬として推奨されています。しかし、このダビガトランや現在、開発が進められているファクターⅩa阻害剤などが次々に出てくるので、このガイドラインも近々変わるかもしれません。
凝固系に働く薬物(井蛙内科開業医/診療録より)
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コメント
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初めまして
宇治難病患者連絡会(愛称宇治なんれん)の事務局長の田口と申します。
私は特発性拡張型(うっ血型)心筋症の患者でもあります。ワーファリンに代る新薬が出来たと聞いてはいたのですが、読売新聞の解説よりも更に深く、このブログでとてもわかりやすく解説をして下さっているので、とても参考になりました。同じようにワーファリンを服用されている患者さんにとってはぜひ知識として知らせてあげたいと思いました。
ありがとうございました。
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納豆風味の納豆もどきhttp://cookpad.com/recipe/1816260
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>Copley Plantさん
コメントありがとうございます。こんなの知りませんでした。納豆好きにはありがたいメニューですね。