タミフル耐性株 新薬効果なし?

タミフル耐性株 新薬効果なし

以下は、記事の抜粋です。


新型インフルエンザウイルスのうち、治療薬タミフルに耐性を持つものは、今年1月に製造販売が承認された新薬ラピアクタ(一般名・ペラミビル)にも耐性があることが、国立感染症研究所の研究でわかった。

感染研の小田切室長によると、昨季に国内で流行した新型ウイルス6915株のうち、75株(約1.1%)がタミフルの効かない耐性株だった。この75株を調べたところ、すべてラピアクタにも耐性があった。別の治療薬リレンザに対しては、どの株も耐性がなく、投薬の効果がみられた。

ラピアクタは点滴薬で、約15分間の点滴を1回投与する。飲み薬のタミフル、吸入薬のリレンザを使用しにくい呼吸器疾患のある人や高齢者に使いやすい。


関連記事にあるように、インフルエンザウイルスのノイラミニダーゼは、感染したホスト細胞の細胞表面にある糖タンパク質末端からシアル酸を開裂する酵素で、細胞内で増殖したウイルスが細胞外に放出されるのを促進する働きがあります。

オセルタミビル(商品名:タミフル)は、ノイラミニダーゼに結合し、その働きを阻害します。オセルタミビル耐性は、多くの場合、ノイラミニダーゼの274番目のアミノ酸であるヒスチジンがチロシンに変異(H274Y)することで生じます。

新聞記事に書かれていることが事実であれば、1回の点滴投与で有効とされるペラミビル(Peramivir、商品名:ラピアクタ)は、H274Y変異したノイラミニダーゼをもつインフルエンザには効果がないようです。

一方、インフルエンザ新薬として最近承認された第一三共のラニナミビル(CS-8958、商品名:イナビル)は、耐性菌にも有効である可能性が高いと思います。というのは、その構造が今回有効であったザナミビル(商品名:リレンザ)と非常に近いからです(記事をみる)。薬事新報の記事にもそう書かれています(記事をみる)。

また、まだ承認されていませんが、富山化学のT-705は、オセルタミビルやザナミビルなどとは異なり、ノイラミニダーゼ阻害薬ではなく、RNAポリメラーゼ阻害薬ですので、H274Y変異株にも有効なはずです(記事をみる)。

新型(豚)インフルエンザの耐性株も報告されていますし、2008-2009年にかけて流行したAソ連型ウイルス(H1N1)の97%がH274Y変異タイプだったことも報告されています。季節型の場合は耐性である可能性を考えて対応する必要があると思います。

新聞記事にもありますが、吸入型は呼吸器疾患のある人や高齢者に使いにくいので、耐性菌に有効な経口薬あるいは点滴薬の登場が待たれるところです。

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