コンビナトリアル・ライブラリー・スクリーニングによるアルツハイマー病IgGマーカー候補の同定

アルツハイマー病、血液検査でも検出可能に 米研究

以下は、記事の抜粋です。


将来、アルツハイマー病を血液検査で検出できるようになるかもしれないとする研究報告が、1月6日のCell誌に発表された。

米スクリプス研究所の研究チームは、血液中に病気の兆候を見つけるという新たな方法を試みた。ペプトイドと呼ばれる分子を用いて、特定の病気の抗体を検出するというものだ。

研究チームはマウス実験で、多発性硬化症に似た症状を呈するマウスでは、抗体の本体である免疫グロブリンが健康なマウスよりも多いことを確認。次に、アルツハイマー病患者、パーキンソン病患者、健常者の各6人の血液を分析した。

その結果、アルツハイマー病患者のほうが、ほかのグループよりも3倍も免疫グロブリンのレベルが高い3種類のペプトイドを確認できた。

研究を主導したThomas Kodadek博士は、この方法を進行の早いすい臓がんなど、その他の病気の早期発見などにも応用できるかもしれないと話している。


元論文のタイトルは、”Identification of Candidate IgG Biomarkers for Alzheimer’s Disease via Combinatorial Library Screening”です(論文をみる)。

各疾患に特異的な血中抗体があるとすれば、それを測定することで疾患が診断できるはずだというのが、この論文の発想です。通常は、疾患の原因に関連するタンパク質などが抗原として抗体により認識されるのですが、本論文ではランダムに合成したペプトイドと抗体の結合を調べています。

具体的には、ランダムに合成した8アミノ酸からなるペプチドを4608種類結合させたマイクロアレイを用意し、これと特異的に反応する疾患特異的な抗体を探しました。

動物実験では、実験的自己免疫性脳炎(experimental autoimmune encephalomyelitis, EAE)の抗原であるミエリン・オリゴデンドロサイト・糖タンパク質(myelin oligodendrocyte glycoprotein, Mog)由来のペプチドでマウスを免疫し、その血中抗体と反応する3種のペプトイドを同定しました。これらのペプトイドは抗Mogペプチド抗体と反応しますが、Mogペプチドと配列上の関連はありません。

同様に、卵白アルブミンを抗原として、3種のペプトイドを同定しました。これらのペプトイドは抗卵白アルブミン抗体とは反応しますが、抗Mogペプチド抗体とは反応しませんでした。

このようにしてペプトイド・マイクロアレイが特異抗体の同定に使えることを確認した後で、研究者らは、このマイクロアレイを用いて記事のように、6例のアルツハイマー病(AD)患者の血中にAD特異的なIgGがあるかどうかを調べました。その結果、AD患者血中の疾患特異抗体と結合すると思われるペプトイドを3種同定しました。

これらのペプトイドは、 Alzheimer’s disease peptoids (ADP) 1-3と名づけられました。興味深いことに、ADP-1とADP-3は同じ抗体と結合しますが、ADP-2は異なる抗体と結合します。これらのペプトイドの診断における有用性を確認するために、新しいAD患者16例とコントロール16例の血液を調べたところ、これらのペプトイドと反応する抗体はAD患者16例中14例、コントロール16例中2例に認められました。

これまで簡単な診断法がなかったADのような疾患が採血で診断できる可能性が出てきたことは評価できますが、メカニズムが不明であることや少数例中に偽陽性と偽陰性があることなど、不安もあります。本当に、すい臓がんの早期発見に使えるのであれば素晴らしいと思います。

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