以下は、記事の抜粋です。
Johnson & Johnson (J&J)は1月3日、米国の医療機関と協力して従来の生体検査に代わるがんの血液検査手法の改善に取り組むと発表した。がん治療に大きな革新をもたらす可能性があるという。
これは循環腫瘍細胞(Circulating Tumor Cell、CTC 腫瘍からはがれ、血中を循環するごくわずかながん細胞)を検出する技術で、数年前にマサチューセッツ総合病院の医師らが開発し、がんの診断を革新する検査方式と評価されてきた。
しかし、これまではがん細胞の数を把握することしかできず、患者の体内でがんがどのようになっているのかをおおまかに理解するためにしか役立っていなかった。
J&Jの腫瘍研究部門、ORD(Ortho Biotech Oncology Research and Development)副社長のNicholas Dracopoli氏は、「この新しい技術で、単にがん細胞の数を数えるだけでなく、分子レベルの変化を調べて細胞内で起きている病状の進行を把握できるようになる。新技術を使えば、1回の採血で数十億個の血中細胞の中から1個のがん細胞を発見することができる。こうして捉えたがん細胞の分子解析を行うことによって、患者に合う治療法があるか判断できる。外科的にサンプルを取る現在の生体検査では、腫瘍の状態をリアルタイムで把握するのは不可能だが、これが可能になる」と語った。
ORDや研究者のほか、米国に初期のCTC検査を導入したVeridexも加わって技術の改善に取り組む。
米食品医薬品局(US Food and Drug Administration、FDA)はすでに、転移性、あるいは進行した乳がん、前立腺がん、結腸直腸がんについてCTC検査を承認している。Dracopoli氏は、これ以外のがんの発見や治療でもCTC検査の有効性を証明するFDAの臨床試験には3~5年かかるとの見通しを示した。
J&J (Veridex)のサイトをみたところ、CellSearch®というCTC測定製品がありましたが、これは「がん細胞の数を把握する」タイプだと思われます(CellSearchをみる)。
上皮細胞用CellSearch®では、上皮細胞接着分子(EpCAM, epithelial cell adhesion molecule)に対する抗体を結合した磁性粒子を用いて、血液中の細胞の中から上皮細胞を分離抽出します。分離された細胞に蛍光標識したサイトケラチン(8, 18 and/or 19)抗体とCD45抗体を反応させ、核をDAPIで染色します。
これでCD45抗体と反応したものは血球細胞として除外し、EpCAM抗体、サイトケラチン抗体、DAPIと反応するものをがん細胞として数えます。
現在は、乳がん、結腸癌、前立腺がん用の3タイプがあって、すべて転移性がん用です。同サイトに症例が動画で紹介されていますが、がん細胞の増減で薬物治療に対するがんの反応をみるというのが主な目的のようです。
上の記事には、がん細胞の数だけではなく「分子レベルの変化を調べて細胞内で起きている病状の進行を把握する」とありますので、現在のCellSearch®ではなく、より多くの種類の抗体を使うか、ジーンチップなどと組み合わせてがん細胞ゲノムの解析を行うのだと思います。
しかし、がん細胞が血中にあったからといって、それがすぐに問題をおこすわけでも、治療を必要とするわけでもありません。前立腺がんマーカーのPSAのように、過剰検査・過剰治療につながらないように注意する必要があると思います。コストを考えれば、現行のように血中がん細胞の数をモニターすることで、治療薬の効果判定やがんの再発の監視に使うのが無難でしょう。とりあえずは、肺がんなど他のがんへの適応拡大でしょうか?
上のニュースの動画です。かなり慎重な見方をしています。
関連記事
PSA検査による前立腺がんスクリーニングをPSA発見者が批判
PSA検診は前立腺癌死亡を減らすか?
コメント