新型コロナウイルス対策には「鼻呼吸」が有効かもしれないとノーベル賞受賞者が主張
日本でもノーベル賞を受賞した人が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)についていろいろと言っていますが、アメリカでも1998年に「循環器系における信号伝達分子としての一酸化窒素(NO)の発見」でノーベル賞を受賞したLouis J. Ignarro氏がNOとCOVID-19について自ら記事を書いています(記事をよむ)。以下は、その紹介記事の抜粋です。
NOは、血管の平滑筋を弛緩させて血流を増加させるという作用を持っており、低酸素血症を引き起こす新生児遷延性肺高血圧症の乳児の治療に用いられています。NOを吸入させることで狭くなった肺動脈が拡張し、血液が十分な酸素を全身に届けることが可能になるそうです。
加えて、NOは血管の平滑筋だけでなく気道の平滑筋も弛緩させるため、より呼吸をしやすくする作用を持っています。
また、免疫に関与するマクロファージも一酸化窒素を生成しており、他の分子と反応して細菌や寄生虫、ウイルスなどを破壊するとのこと。NOが持っている対病原体作用や気道・肺動脈の拡張作用、血液中の酸素量を増加させる作用が、新型コロナウイルスから体を守る上で役立つ可能性があるとイグナロ氏や他の研究者らは考えており、すでにCOVID-19患者の治療にNOを吸入するという臨床試験もスタートしています。
NOを新型コロナウイルス対策に利用するという発想は、SARSコロナウイルスに関連する試験結果に由来しています。SARSウイルスに感染した細胞を使用した研究では、一酸化窒素が直接的な抗ウイルス効果を持っていることが示唆されました。この研究では、NOがウイルスタンパク質と遺伝物質のRNAの産生を阻害し、SARSウイルスの複製サイクルを防いだとのこと。また、2004年の小規模な臨床研究でも、SARSに感染した患者を治療する上で一酸化窒素の吸入が効果的であることが示唆されました。
2020年に流行した新型コロナウイルスもゲノムの大部分をSARSコロナウイルスと共有していることから、NOの吸入がCOVID-19患者の治療に有効な可能性があるとイグナロ氏は指摘。NOの吸入とCOVID-19の治療に関する複数の臨床試験が進行中であり、必要となる人工呼吸器や入院患者の数が減少することが期待されているとのことです。
また、NOは口の中では生成されない一方で副鼻腔では継続的に生成されており、副鼻腔内で生成されるNOは医療現場で用いられるものと同一だとのこと。この点からイグナロ氏は、「鼻呼吸をすることでNOが直接肺に送られ、気道が拡張して血流が増加するだけでなく、新型コロナウイルスの増殖を抑えることができるかもしれない」と主張。NOの吸入量を最大化するため、「鼻から息を吸うことを忘れないでください」とイグナロ氏は述べました。
私は、1998年に一酸化窒素(NO)の発見でIgnaro氏と同時にノーベル賞を受賞したFerid Murad氏の研究室に留学していました。その縁で、Ignaro氏が来日した時に彼の新しい夫人(たしかUCLAのインターンかレジデントでした)と一緒に、神戸の麤皮(あらがわ)という店でステーキをご馳走になったことがあります。20年ぐらい前の話です。彼ら夫婦がフィレを注文し、僕がサーロインを注文して出てきたそれぞれのステーキをみて、Ignaro氏が僕を羨ましがっていたことやダイエット中だったはずの夫人が完食したのを鮮明に覚えています。
Ignaro氏が、NOがペニスの勃起を引き起こす神経伝達物質であることを示した業績は、バイアグラ®(一般名:シルデナフィル)の開発のきっかけになったそうで、彼は「バイアグラの父(Father of Viagra)」と呼ばれているそうです。とても気さくで普通のオッサンです。
ノーベル賞学者の言うことだから真実とは限りませんが、鼻毛もあるので鼻での呼吸は口よりも安全のような気がします。エビデンスはあるのでしょうか?
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