ダイヤモンド・プリンセス104例からの知見(自衛隊中央病院)

ダイヤモンド・プリンセス104例からの知見(自衛隊中央病院)/Lancet Infect Dis
以下は、記事の抜粋です。


ダイヤモンド・プリンセス号から搬送された新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と診断された104例について臨床的特徴を分析した単一施設・後ろ向き研究の結果が発表された。自衛隊中央病院のチームによるもの。

2020年2月11日~25日に自衛隊中央病院に入院したCOVID-19感染者を対象とし、臨床記録、検査データ、放射線検査の所見を分析した。期間中に乗客・乗員3,711人が船内の検疫におけるPCR検査を受け、陽性となった患者のうち、合意のとれた104例が対象となった。

重症度は、以下のように定義した。
・臨床徴候および症状なし:無症候性
・重い肺炎(呼吸困難、頻呼吸、SpO2<93%、および酸素療法の必要性)あり:重症
・上記以外:軽症
追跡終了時に、無症候性を含むさまざまな重症度の患者における入院時の臨床的特徴を比較し、無症候性と臨床症状のある患者の疾患の進行に関連する要因について特定した。

主な結果は以下のとおり。

・参加者の年齢は25~93歳、年齢中央値は68歳(IQR:47〜75)だった。
・男性が54例(52%)、東アジアからの参加者が55例(53%)と最も多かった。
・観察期間は3~15日(中央値10日、IQR:7〜10)だった。
・52例(50%)に何らかの併存症があった。
・重症度は以下の通り(いずれも入院時/全観察期間)だった。
無症候性:43例(41%)/33例(32%)
軽症:41例(39%)/43例(41%)
重症:20例(19%)/28例(27%)

入院時に無症候性だった43例のうち、観察期間終了時まで無症状だった33例と症状の発現した10例を比較したところ、最後まで無症状だった33例中17例(52%) は入院時の胸部CTの所見に異常が見られた(症状のある患者では73%)。

観察期間終了時における軽症例(43例)と重症例(28例)との比較では、重症例のほうが高齢(60歳 vs.73歳、p=0.028)で、入院時の胸部CT異常の割合(65% vs.86%、p=0.062)とリンパ球減少の割合(23% vs.57%、p=0.0055)も重症例のほうが高かった。

血清乳酸ヒドロゲナーゼ(LDH)濃度は、入院時には無症状であったが、観察期間中ずっと無症状のままであった33人の患者と比較して、COVID-19を発症した10人の患者では有意に高かった(50%対12%、p=0-020)。

まとめとして著者らは、今回の結果からは、LDH高値が有症状の予測因子となり、高齢、胸部CT画像のすりガラス影、リンパ球減少が疾患進行の潜在的リスク因子だと示唆している。


ダイヤモンドプリンセス号の乗客は、閉じられた空間の中で多くのヒトが感染した世界にも例が少ない貴重な症例群です。忙殺されずに論文にまとめた著者らに敬意を表します。

元論文のタイトルは、”Clinical characteristics of COVID-19 in 104 people with SARS-CoV-2 infection on the Diamond Princess cruise ship: a retrospective analysis”です(論文をみる)。

年齢の中央値は68歳ということですので、患者の多くは高齢者です。このような集団で、感染しても無症状の率が32%ということと、その約半分(52%)に肺の異常がCTによって認められたというのは驚きです。若い人の場合は無症状が半分近いということが推測されます。

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