抗うつ剤、長期使用で認知症リスク増の可能性 英研究
以下は、記事の抜粋です。
長期的な抗うつ剤の使用が認知症の発症と関連があるかもしれないと指摘する論文が発表された。ただ、研究者らは抗うつ剤が認知症の原因であるとは結論付けられなかったという。
研究者らが英国内で30万人以上を対象に調査を行った結果、過去4~20年の間にうつ病やある種のぼうこうの病気を治療するためにいわゆる抗コリン薬を処方されていた人は、そうでない人と比べて認知症と診断される割合が3割強ほど高かったという。
論文の共同執筆者で英University of East AngliaのGeorge Savva氏は、抗うつ剤が認知症の原因かどうかはよくわからないと前置きした上、抗うつ剤が「認知症の発症を示す最初期に処方されている可能性がある」と語った。
抗コリン薬はある種の神経インパルスを妨げ、ぼうこう筋のけいれんを緩和するほか、うつの症状やパーキンソン病の症状を抑えるなどの作用がある。
研究者らによると抗うつ剤として使用される抗コリン薬にはアミトリプチリン、塩酸ドスレピン、パロキセチンなどがあり、調査では65歳以上の認知症患者4万770人と非認知症者28万3933人を比較したという。
ただ、研究チームは患者が専門医や薬剤師と相談せずに抗コリン薬の使用をやめることは控えるよう訴えている。
元論文のタイトルは、”Anticholinergic drugs and risk of dementia: case-control study”です(論文をみる)。
認知症に使われるドネペジル(アリセプト®)は、神経伝達物質のアセチルコリンを分解する酵素の阻害薬で、脳のアセチルコリン活性を上げると考えられています。このアセチルコリン神経の活性化が認知症の症状を改善するとされているので、その活性を阻害する抗コリン薬が認知症リスクを増やす可能性は高いという話は受け入れやすいです。
しかし、花粉症や車酔い、腹部のけいれんなどに処方される一般的な抗コリン薬では、こうしたリスクは見つかっていないようです。論文にも、長時間作用性抗コリン薬や使われることが多い慢性閉塞性肺疾患(COPD)の患者でも、認知症リスクが増えていないようです。
認知症リスクが増えるとされる抗うつ薬やパーキンソン病治療薬は中枢神経への移行性が高いからかとも考えましたが、神経因性膀胱や過活動膀胱の治療に用いられる抗コリン薬もそれほど中枢には移行しないはずなので、メカニズムは良くわかりません。論文にも書かれているように、既に認知症が始まっているヒトがうつやパーキンソン病になったり、神経因性膀胱や過活動膀胱になったりしやすいのかもしれません。
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