シャープ、プラズマクラスターがインフルエンザウイルス低減、臨床試験で実証?

シャープ、プラズマクラスターがインフルエンザウイルス低減、臨床試験で実証 

以下は、記事の抜粋です。


シャープは、11月9日、高濃度プラズマクラスターイオンが、インフルエンザウイルスの人間への感染率を低減する傾向があると発表した。生物統計学を専門とする大橋・東大医学系研究科教授監修の下で行った臨床試験で実証したもの。

シャープは、これまで試験機関で高濃度プラズマクラスターの浮遊ウイルスの感染力抑制効果検証を行ってきたが、人間を対象とした臨床試験は初めて。太田・シャープ取締役専務執行役員は、「今回、文部科学省の橋渡し研究支援推進プログラムを通じて、大橋教授の協力を得ることができた」と経緯を語った。

臨床試験は、東京都・神奈川県内の透析病院44施設、患者3407名の同意を得て、2009年12月1日から2010年6月30日まで行った。治療薬の薬効を客観的に調べる「二重盲検法」を用い、透析室の各フロアのエリアを、1000個/cm3の高濃度プラズマクラスターイオンあり/なしのエリアに分けて実施。

その結果、インフルエンザウイルスは、イオンありのエリア1154例のうち9件が発症、イオンなしのエリア1274例のうち14件で発症した。これによって、高濃度プラズマクラスターエリアのインフルエンザ発症件数は、イオンなしのエリアに比べて30%低減し、発症低減の有効性を確認した。

大橋教授は、試験結果について、「ヒトへのインフルエンザウイルス感染低減の傾向が確認された。今後、疫学・臨床研究による検証が必要ではあるが、うがい・手洗いと同じような日常の対策として期待できる」と評価。さらに、「ダニ・花粉などによるアレルギー疾患、カビによる感染症のリスク低減効果についても研究テーマとして検討したい」と、プラズマクラスターへの期待を述べた。

シャープは、今後もプラズマクラスターの臨床研究を強化し、技術開発を進めていく。太田専務は、「世界の人々の健康を守ることに貢献していく」と力強く語った。


以下の記事は、上の朝日の記事とまったく同じ臨床試験を扱った日経メディカルの記事です。

透析室でのプラズマクラスターイオン発生装置の利用、インフルエンザ感染の発症を抑える効果は確認できず

以下は、記事の抜粋です。


試験は、合計観察日数当たりのインフルエンザ感染の発症件数を主要評価項目とした。試験の対象施設数は神奈川県内の44施設で、計3407人の通院患者が透析を受けている。比較方法は、各施設の透析室をイオンありの区域となしの区域に無作為に区分けし、それぞれの区域で透析を受ける患者の間でインフルエンザ感染の発症率を比較した。

観察期間は2009年12月1日から2010年6月30日までで、この間のインフルエンザ感染の発症件数は、イオンあり群(1154人)で9件、イオンなし群(1274人)で14件だった。主要評価項目は、イオンあり群が0.0000411に対し、イオンなし群が0.0000590だった。イオンあり群に対するイオンなし群のオッズ比は1.7002(95%信頼区間;0.7252-3.9862、p=0.09935)となり、有意差はなかった(コクラン・マンテル・ヘンツェル検定)。なお、並べ替え検定でも、p値は0.1973で有意差はなかった。

また、患者背景では、女性の割合が、イオンあり群で33.7%(387人)、なし群で39.0%(493人)と有意差が見られた(p=0.01)。主要評価項目への影響はなかったのか、検証が求められる。

なお、今回の試験の詳細は、監修に当たった東大大学院医学系研究科の大橋靖雄氏が、2011年1月21日、22日に開催される日本疫学会で発表する予定だ。


大橋教授という人は慎重に言葉を選んでおり、嘘はついていないと思います。しかし、朝日の書き方では、「プラズマクラスターイオンがインフルエンザに効く」ことを東大教授が保証しているように大半の読者は理解するでしょう。

シャープはプレスリリースで、この臨床試験は「アカデミック・マーケティング」に基づいて行ったとしています。アカデミック・マーケティングとは、「技術の効能について、先端の学術研究機関と共同で科学的データを検証し、それをもとに商品化を進めるマーケティング手法」だそうです(プレスリリースをみる)。

この定義も嘘ではありませんが、検証して科学的根拠がない健康機器をいかにもそれがあるように偽ってマーケティングするのは、消費者を騙す行為です。私は、外部資金が欲しいアカデミック機関を、商品の権威付けに利用するマーケティング手法を否定しませんが、ここまでやるとやり過ぎでしょう。

大臣に専門知識がなくてもまったく不安になったりしませんが、日本の代表的な電機メーカーと大学とマスメディアの合作が上の記事だと思うと、少し不安になります。

下左は大橋教授、右は太田専務(家電Watchより)

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