抗菌薬「コリスチン」早期導入へ 耐性菌に効果

抗菌薬「コリスチン」早期導入へ 耐性菌に効果

以下は、記事の抜粋です。


多くの抗菌薬が効かない細菌による感染症に効果が期待される薬「コリスチンメタンスルホン酸ナトリウム」を、承認申請があった際の優先審査などの優遇措置を受けられる「希少疾病用医薬品」とすることを、厚生労働省薬事・食品衛生審議会医薬品第2部会が10月25日、認めた。

英グラクソ・スミスクライン社が、健常者を対象に使用量などを確認する数カ月程度の臨床試験を開始。同社は「終了後は、一日も早く製造販売の承認申請をしたい」としている。

院内感染で注目された多剤耐性アシネトバクターや、NDM1という酵素をつくる遺伝子を持った腸内細菌は、現在使われている主力の抗菌薬を分解してしまう。日本化学療法学会は、海外で既に承認されているこの薬を早く日本に導入するよう訴えていた。


9月9日の関連記事で岩田健太郎氏の下記の記載を引用しました。

「もし厚労省が本気でこの菌を問題にしていたのならば、感染症法改正をして届け出感染症にしておけばよかったのである。コリスチンを緊急承認して治療体制を整えればよかったのである。」

その後2ヶ月以内にこれら2つの提案は実現されました。正しい提案だったようです。

Wikiによると、コリスチン(ポリミキシンE)は、1950年にライオン製薬(現ポーラファルマ)の小山康夫、黒沢秋雄らによって、福島県掛田町の土壌中の芽胞桿菌Bacillus polymyxa var. colistinusが産生する物質から発見されたそうです。

ポリミキシンBと同様、カチオン性デカペプチド抗生物質で、作用機序は、緑膿菌やアシネトバクターなどのグラム陰性細菌外膜のアニオン的なリポポリサッカライドに結合して膜構造を壊し、膜透過性を上昇させて殺菌効果を発揮すると考えられています。

国内ではまったく市販されていないように記事には書かれていますが、内服薬、点眼薬、軟膏などは既に認可され販売されています(情報をみる)。ここに書かれているのは注射剤(筋肉内または静脈内)についての承認です。

90年代に製造が中止になり、承認が取り消された最大の理由はその毒性です。非経口コリスチンでは、口周囲および四肢の知覚異常、全身性そう痒、眩暈、不明瞭言語、筋肉脱力、呼吸困難などの神経障害(30%)や腎臓障害(20%)が報告されています。腎不全患者では神経障害が発生しやすく、腎毒性を有する他の薬物(例、アミノ配糖体系またはクラーレ様薬物)との併用は避けるべきだとされています。

実際には、微生物学的な相乗作用や相加作用を期待してリファンピシンあるいはカルバペネムと組み合わせて使用されることが多いですが、その科学的根拠は明確ではないそうです。また、このような治療を行っても多剤耐性アシネトバクター感染症の予後は不良で、致死率は8~23%だと報告されています。

コリスチンは、既に耐性アシネトバクターも出現しており、その強い毒性や部分的な効果を考えれば、承認されたから大丈夫というものではありません。アシネトバクターに対する「最後の切り札」ではなく、むしろ、最後の頼みのほそい綱と考えるべきでしょう。

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