日本のガイドラインで推奨される睡眠薬、最も有用なのは?

日本のガイドラインで推奨される睡眠薬、最も有用なのは?
以下は、記事の抜粋です。


不眠症のガイドラインでは、いくつかの睡眠薬が推奨されているが、臨床現場において最も有用な睡眠薬は明らかとなっていない。秋田大学の竹島氏らは、不眠症に対する初回治療薬としてガイドラインで推奨される睡眠薬による単剤療法の失敗リスクが低い薬剤、単剤療法後の中止率の高い薬剤を特定するため、本研究を実施した。

2005年4月~2021年3月の日本医療データセンターレセプトデータベースのデータを用いて、レトロスペクティブ観察コホート研究を実施した。対象患者は、不眠症に対する初回治療薬としてガイドラインで推奨される睡眠薬(スボレキサント、ラメルテオン、エスゾピクロン、ゾルピデム、トリアゾラム)による単剤療法を行った成人患者。データ分析は、2022年12月24日~2023年9月26日に実施した。主要アウトカムは、単剤療法の失敗とし、ガイドラインで推奨される睡眠薬による単剤療法を開始してから6ヵ月以内に睡眠薬の変更または追加を行った場合と定義した。副次的アウトカムは、単剤療法の中止とし、単剤療法が失敗しなかった後、6ヵ月以内に2ヵ月連続で睡眠薬を処方しなかった場合と定義した。

主な結果は以下のとおり。

・不眠症に対する初回治療薬としてガイドラインで推奨される睡眠薬による単剤療法を行なった患者23万9,568例(年齢中央値:45歳、四分位範囲:34~55歳、女性の割合:50.2%)が本研究に含まれた。
・6ヵ月間のフォローアップ期間中に単剤療法を失敗した患者は、2万4,778例(10.3%)であった。
・エスゾピクロンと比較し、ラメルテオン(調整ハザード比:1.23、p<0.001)は単剤療法の失敗例が多く、ゾルピデム(0.84、p<0.001)、トリアゾラム(0.82、p<0.001)は失敗例が少なかった。スボレキサントとエスゾピクロンでは、有意な差が認められなかった。
・単剤療法が失敗しなかった後、睡眠薬を中止した患者の割合は、84.6%であった。
・エスゾピクロンと比較し、ラメルテオン(1.31、p<0.001)、スボレキサント(1.20、p<0.001)は中止例が多かった。ゾルピデムまたはトリアゾラムとエスゾピクロンでは、有意な差が認められなかった。


スボレキサント(ベルソムラ®)、ラメルテオン(ロゼレム®)、エスゾピクロン(ルネスタ®)、ゾルピデム(マイスリー®)、トリアゾラム(ハルシオン®)は臨床で良く使われる睡眠導入剤です。

トリアゾラム(ハルシオン®)は、GABAA受容体に作用するベンゾジアゼピン系の超短時間作用型睡眠導入剤で、日本では1982年に発売された。翌日への持ち越し効果はないが、依存性があり薬物乱用のリスクが高い薬です。

エスゾピクロン(ルネスタ®)とゾルピデム(マイスリー®)は名前にZが含まれることからZドラッグと呼ばれています。ベンゾジアゼピン系よりも選択的に睡眠効果のあるGABA受容体に結合することで、理論上、ふらつき、依存性などの副作用が少ないとされ、「非ベンゾジアゼピン系睡眠薬」とも呼ばれますが、依存性はあるので連用は避けるべきです。なお、依存性をさけるためトリアゾラム(ハルシオン®)とゾルピデム(マイスリー®)には30日の処方制限があります。今のところ、エスゾピクロン(ルネスタ®)は、効果も強く処方制限がないので、日本で最も好んで使われる睡眠薬になっているようです。

スボレキサント(ベルソムラ®)は、オレキシン受容体拮抗薬です。レム睡眠が増加し、夢が増えて悪夢を見やすくなるそうですが、ベンゾジアゼピン系やZドラッグと比べて内服中止に伴う反跳性不眠は観察されない、身体的依存は起こりにくい、認知機能に影響が少ない、健忘が起こりにくいなど、高齢者に対して使い易いと言われています。この報告をみると、スボレキサント(ベルソムラ®)の効果は、エスゾピクロン(ルネスタ®)よりも弱そうですが、レンボレキサント(デエビゴ®)という新しいオレキシン受容体拮抗薬はZドラッグに匹敵する睡眠作用があると言われています。

ラメルテオン(ロゼレム®)は、視交叉上核に存在するメラトニン受容体を刺激し、睡眠中枢を賦活させることで、自然な睡眠をうながすとされていますが、この報告でも失敗や中止が多いとされているように、効果は弱そうです。

結局、一般的にはエスゾピクロン(ルネスタ®)、高齢者にはオレキシン受容体拮抗薬という選択になるのでしょうか?ただ、オレキシン受容体拮抗薬は比較的新しい薬なので、ジェネリックはなく価格が高い点が問題になるかもしれません。

 

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