新型コロナ抗体検査が示唆した数値はどこまで信頼できる?

抗体検査と制限解除 命か経済か?
神戸中央市民病院は5月2日、新型コロナウイルスと関係のない症状で4月7日までの8日間に外来を受診した患者1000人の血液を調べ、過去に感染したことを示す抗体が33人(2.7%)から確認されたと発表しました。性別や年代の偏りを修正すると、抗体を持つ人の割合は2.7%だった。数字上では、当時市で判明していた感染者の400倍以上です。本当に、こんなに多くの神戸市民が感染したのでしょうか?米国のScience誌に掲載された抗体検査についての厳しい記事を中村佑介氏が医療関係者サイトm3に紹介しています。以下はその抜粋です。


抗体検査で何がわかるのかを説明します。抗体検査を加えると感染の診断精度が上がると説明されていますが、これは誤りです。PCR検査ができない(をしない)言い訳にすぎません。

感染初期には十分な抗体が産生されていませんので、今感染しているかどうかの診断的価値は非常に限定的です。下図にあるように、発症から1-6日間で抗体陽性となるのは7%程度しかないと国立感染症研究所がすでに発表しています。この検査は、集団においてどの程度の方が感染していたかを知る指標となります。

出典:国立感染症研究所

日本は、WHOの「Test, test, test」や他国の積極的なPCR検査の動向に反して、PCR検査を絞り込んでいるため、感染の実態がつかめていません。感染症対策は「検査と隔離」が基本なのですが、日本だけが、世界と異質な対応を取っているのです。

抗体検査が示唆した数値はどこまで信頼できる?
そんな中、「Antibody surveys suggesting vast undercount of coronavirus infections may be unreliable.」というコメンタリーがScience誌に公表されています。要約すると「抗体検査は非常に多くのコロナウイルス不顕性感染を示唆したが、どこまで信頼できるのか?」といったところでしょうか。

非常に簡単ではありますがそのサマリーと私の考察を紹介します。

コメンタリーは「新型コロナウイルス抗体による一般集団の調査は、PCR診断を受けていない人たちの間にどの程度不顕性感染が広がっているかを知る手掛かりとなる。そして、このウイルスに感染すると、どの程度致死的であるかを知ることができる」といった内容で始まります。ただし、抗体を調べるキットの質は玉石混交です。

コロナウイルスはいろいろなタイプがあり、一般的な風邪の原因となっていますので、単にコロナウイルス抗体陽性といったあいまいなものでは駄目です。今回の新型コロナウイルスだけに反応することが非常に重要です。他のコロナウイルスに対する反応があれば、判断を誤らせます。

コメンタリーに戻ると、米国の一部やドイツ、オランダで新型コロナウイルスに対する抗体調査が行われ、すでに、2%-30%の住民がウイルスに感染していた可能性があると報告されています。この結果から、実際に新型コロナウイルスに感染した人が、PCR検査によって感染が確認された人よりも、はるかに多いこと、そして、そのことから大半の人の症状が軽い(あるいは、ない)ことを示唆しました。

しかし、これも抗体が新型ウイルスに特異的であるかどうかによって、評価は変わってきます。従来のコロナウイルスに反応するようなものまで使われており、特異性が落ちています。

また、報告した研究者の一部がロックダウンの早期解除を主張していた経緯があり、この数値が早期解除すべきという主張を支持しているとされていることから、一部の研究者はこの結果を疑問視しています。また、これらの報告の多くが、どの程度抗体の量が増えているのかの情報がありません。

さらに、ウイルスが新型なので当然のことですが、感染を防ぐには抗体がどの程度増えている必要があるのかという目安もありません。そして、抗体量がどの程度の期間維持されているのかも、まだわかっていません。

WHOのマーク・パーキンスは、もし、2%-30%という数字が事実でも、「45%、あるいは、60%に達しない限り、規制緩和すべきでない」とコメントしました。

また、3,300人を調査したスタンフォード大学によるカリフォルニアの調査では2.49%-4.16%の住民がすでにウイルスに感染していたと報告しています。この結果はPCR検査で診断が確定した患者の50倍にも及びます。ロサンゼルスやオランダなどでも同じような数字が出ています。ボストンの200人を対象とした調査では、30%を超える人が抗体検査陽性となっています。これについて、研究者たちは抗体の特異性を99.5%と主張しているのに対して、検査薬を開発した企業は、特異性は90%と回答しているようです。

真実は闇の中? 科学の世界でも何を信じるべきか不透明な状況
―以上がScience誌に公表された内容とそれに関連する情報です。皆さんはどのようにお感じになったでしょうか。私は科学の世界でも、何を信じていいのかわからなくなってきました。金正恩の動向のごとく、真実は闇の中のような状況です。

すでに多くの人が不顕性感染(症状のない感染)を起こしているので、これらの数字を参考に制限解除につなげようという動きがある一方、この程度の数字では、制限解除はすべきでないという考えもあります。緩めれば、感染していない人たちに一気に感染が広がる危険性があります。


上記のように、コロナウイルスには少なくとも7つの種類があり、測定に用いた抗体が新型コロナウイルス特異的かどうかが問題です。さらに、抗体を持っていても病気にかからない可能性が低いこともまだ証明されていません。やはり、イムノクロマト法などのPCR以外の簡易で迅速な抗原(ウイルス)測定法が確立し普及することが重要だと思います。

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