BMS’s Diabetes Drug Dapagliflozin Shows Promise – Lancet
以下は、記事の抜粋です。
ブリストル・マイヤース・スクイプ (BMS)の新しい2型糖尿病治療薬、ダパグリフロジン(dapagliflozin)は、早期あるいは末期の糖尿病患者にとって、新しい薬物治療の選択肢になるかも知れない。
Lancetに記事を掲載した英国Aston大のClifford Bailey教授によると、ダパグリフロジンはNa-グルコース共輸送体2(sodium-glucose cotransporter-2、SGLT2)の選択的な阻害薬で、インスリンとは独立に血糖を改善し、体重を減らす。
ダパグリフロジンは、腎臓におけるグルコースの再吸収を阻害し、尿中へのグルコース排泄を促進することでその作用を発揮する。その結果、インスリンによる血糖降下システムに影響することなく、血糖を下げる。
多くの糖尿病合併症は、高血糖が原因なので、この薬物のように直接血糖を下げることは、新しい糖尿病治療薬がめざす作用機序として理にかなっている。
論文によると、研究者らは、メトホルミンでの初期治療では血糖コントロール不良の患者にダパグリフロジンを投与し、その有効性と安全性を調べた。
その結果、メトホルミンでの初期治療により血糖コントロールできない患者の高血糖を改善できた。インスリンとは独立に作用し、体重を減らし、低血糖の危険性もない。安全性と認容性も合わせて確認された。従って、メトホルミンにダパグリフロジンを追加することは、2型糖尿病治療の新しい選択肢となると結論された。
元論文のタイトルは、”Effect of dapagliflozin in patients with type 2 diabetes who have inadequate glycaemic control with metformin: a randomised, double-blind, placebo-controlled trial”です(論文の要約をみる)。
この第Ⅲ相、多施設、二重盲検、並行群間、プラセボ対照臨床試験では、毎日1500mg以上のメトホルミンを投与されていても血糖コントロールできない546名の成人2型糖尿病患者を対象としました。患者をランダムに2.5mg/day (n=137)、5mg/day (n=137)、10mg/day (n=135)、プラセボ(n=137)の4群にわけてダパグリフロジンを経口投与しました。
以前からのメトホルミンは、そのままの量を服用し続けました。主要転帰(primary outcome)は、24週後のhaemoglobin A1c(HbA1c)値の変化です。
24週後、プラセボ群でのHbA1c値は-0.30%、ダパグリフロジン 2.5mg/day群、5mg/day群、10mg/day群ではそれぞれ、-0.67%、-0.70%、-0.84%で、有意に低下しました。低血糖症状は、投与群とプラセボ群で出現率は同じ(3%)でした。
一方、性器感染を示唆する兆候や症状は、プラセボ群で5%、ダパグリフロジン 2.5mg/day群、5mg/day群、10mg/day群ではそれぞれ、8%、13%、9%でした。この増加はわずかですが、問題になる可能性があります。
Lancet誌の解説によると、Na-グルコース共輸送体2(SGLT2)をコードする遺伝子SLC5A2に変異がある症例では、尿糖が50-100g/dayあっても、電解質喪失や泌尿器・生殖器感染の増加はなく、他の臨床症状も認められません。このような症例の発見がSGLT2阻害薬の開発のヒントになったそうです。
今回の臨床試験は、メトホルミンへの追加投与ですが、単独投与でも効果が期待できます。BMSとアストラゼネカが日本を含む多くの国で共同開発中です。また、Johnson & Johnsonやアステラス製薬も同様の選択的SGLT2阻害薬、それぞれカナグリフロジン(canagliflozin)とASP1941を開発中です。
従来の薬物は、動脈硬化などの高血糖による合併症を防ぐだけでしたが、低血糖の恐れもなく体重減少や降圧作用も併せて期待できる選択的SGLT2阻害薬は、早期あるいは末期の糖尿病患者に対する治療薬として広く用いられる可能性があります。
気がついたら、Wall Street Journalの記事全文が読めなくなっていたので、類似の記事を以下に紹介しておきます。
New Bristol, Astra diabetes drug effective in study
Dapagliflozin plus metformin improved glycemic control, weight loss
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