日本の癌ゲノム医療が招く「悪夢」

日本の癌ゲノム医療が招く「悪夢」
以下は、記事の抜粋です。


保険医療としての癌ゲノム検査が、いよいよ始まります。6月に保険収載されることになりそうです。しかし、今のままだと患者の期待を大きく裏切ることになりかねません。癌ゲノム検査を国民皆保険でカバーしようとしたために、悪夢のような事態が起きようとしています。

その悪夢とは。治療を待つうちに患者がバタバタ死んでしまい、実施した癌ゲノム検査が何の役にも立たないという事態が多発する恐れがあることです。

癌ゲノム検査を受けてから、治療が開始されるまで長い期間待たされます。その間に多くの患者が死んでしまいます。なぜなら、癌ゲノム検査が保険適用されるのは、末期の患者だからです。死なないまでも、例えば肝機能が低下したりして、新しい分子標的薬を受ける「適格基準」から外れてしまい、やはり死を待つのみになります。治療につながらない以上、癌ゲノム検査は患者に何の恩恵ももたらしません。

保険で癌ゲノム検査を受けられる患者の実際の余命はどれくらいでしょうか。胃がん・膵がん中央値28日、大腸がん56日です。緩和医療病棟の入院期間の平均値は30日前後です。一方で、癌ゲノム検査に必要な時間はどれくらいでしょう。答えは約1カ月です。半分くらいの患者が、癌ゲノム検査の結果が判明する前に亡くなってしまう計算です。

なんでこんなことになっているのでしょうか。私は、保険診療で行おうとしていることが、全ての問題の根源だと考えています。

癌末期の患者だけに癌ゲノム検査を行うことがそもそも間違っています。癌ゲノム検査はできるだけ早く行うのが理想です。なぜなら、早期の段階で一括して遺伝子変異を調べれば、俯瞰的な治療戦略の立案が余裕を持ってできます。

ではどうして日本は対象を末期の癌患者に絞ることになったのかというと、保険で行うからです。癌ゲノム検査の保険点数は1回当たり20万円、30万円などと予想されていますが、年間100万人の新規癌患者に全て実施すれば2000億円から3000億円の支出増です。対象を絞らざるを得なくなります。


記事を書いた野村氏は、癌ゲノム検査は自由診療で行うべきだと書いています。その方が値段も安く、医療現場のニーズにも合うと書かれていて、私もそう思います。しかし、もう癌末期の患者だけに癌ゲノム検査を保険適用することは決まっています。早期の癌でゲノム検査を望む患者は、アメリカよりも高い検査料を払わなければならない可能性があります。読めば読むほど暗澹たる気持ちにさせてくれる記事です。

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