なぜ髪は白くなるのか、PD-L1も関与している??

なぜ髪は白くなるのか、元の色に戻せる日は「そう遠くない」…原因は加齢だけではない、「一晩で白髪に」の真相は、髪色復活の鍵を握るタンパク質
以下は、記事の抜粋です。


毛包は髪に色素が付く場所であり、また多くの人にとって、色素の減少が始まる場所でもある。白髪に関わる「メラノサイト」という細胞は、髪や肌、目の色素であるメラニンを作る役割も担っている。

髪の色は、皮膚の色と同じく、日光に対する体の保護機能として進化したと考えられている。そこには100以上もの遺伝子が関わっており、髪の色は最大99%遺伝によって決まる。

頭に生えている髪の毛の一本一本は、次に挙げる4つの成長サイクルのうちいずれかの段階にある。

ひとつ目の段階は毛包から毛母細胞が成長するアナゲン期(成長期)で、数年にわたって続く。カタゲン期(退行期)には成長のスピードが緩やかになり、髪が毛包から離れる。テロゲン期(休止期)は、新たな髪を成長させるために毛包が髪を放出する準備をする段階だ。最後のエクソゲン期(排出期)には、髪が頭皮から抜け落ちる。その合計は1日に数十本、時には数百本に及ぶ。この再生のサイクルは常に継続しており、一つひとつの毛包が独自のタイムラインを持っている。

髪に色素が付くのはアナゲン期だ。毛髪サイクルが始まると、毛包の毛球部にある幹細胞がメラノサイトを生成し、メラノサイトが色素を作る。メラノサイトは毛髪サイクルの終了までに死滅し、幹細胞から新たなメラノサイトができる。しかし、年月がたつにつれてメラノサイトは勢いを失い、色素を作る量が減って、最終的にはまったく作らなくなる。

その結果として、毛幹の中はメラニンではなく空気で満たされるようになり、われわれの目はその半透明の毛幹を、色あせたようなグレーや銀色、白として認識する。

白髪への変化は毛包で起こるため、いったん毛包から生えた毛の色素を変えることはできない。しかし、ストレスなどによってテロゲン期(休止期)の髪が増え、通常よりも抜け毛が増える状態はおこる。そして、残された毛が以前よりも目立つことで、すでにあった白髪が目に付くようになり、「一晩で白髪に」なったように見える可能性はある。

メラノサイトの活力を失わせる要因は加齢だけではない。遺伝子も色素の減少に関わっており、髪が白くなる年齢は人種や民族にも関連している。たとえば、白人は黒人に比べて最大10年も早く白髪が出始める。

良くも悪くも、白髪は年齢を連想させ、われわれが自分自身や他人を見る目に大きな影響を与える。50歳までに髪の半分以上が白髪になる人は、世界で最大23%にのぼるにもかかわらず、白髪を隠さない人たちへの差別はまん延している。

また、白髪の人が男性か女性かで、社会の認識は異なる場合がある。男性は一般に、年を重ねるにつれて気品と魅力が増したとみなされるようになる傾向があり、二枚目俳優にちなんで「ジョージ・クルーニー効果」と呼ばれている。一方で女性は、白髪が目立つことに対する偏見にさらされることもあってか、米国では最大75%の女性が髪を染めている。

アラバマ大学のメリッサ・ハリス氏氏はこれまでに、髪が白くなることが免疫反応に関連している可能性があるという発見をし、現在は、幹細胞を再び活性化させる方法についての研究を進めている。

このほか、免疫療法を受けた肺がん患者のグループで、再度の色素沈着が起こり髪の色が元に戻ったことを示す驚くべき研究もある。

鍵を握るのは、免疫系の働きを抑える「PD-L1」と呼ばれるタンパク質ではないかと考えられている。PD-L1は、メラノサイトを作る活発な状態の幹細胞と比べると、休眠状態にある幹細胞でより多く働いている。


肺がん患者に用いられたオプジーボ®(ニボルマブ)やキイトルーダ®(ペムブロリズマブ)などのチェックポイント阻害薬(抗PD-1/PD-L1抗体)の前向き試験に登録された、肺がん患者52例中、14例(男性13例、女性1例、平均年齢64.9歳)で、以前の髪色への再色素化が確認されたという報告があります。この再色素化は、びまん性の色素化や白髪中への黒斑として認められたようです(論文をみる)。

チェックポイント阻害薬には1型糖尿病などの重大な副作用が報告されているので、白髪の治療に使うのは非現実的です。染める方が無難かもしれません。とはいうものの、以下のチェックポイント阻害薬の論文に掲載された写真のように、効果絶大の場合もあるようです。

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