PSA検査の勧奨は前立腺がん特異的死亡率をごくわずか(0.09%)しか減らさない。

PSA検査の勧奨は前立腺がん死亡を減らすか?~40万人超・15年間追跡
以下は、記事の抜粋です。


50~69歳の男性に前立腺特異抗原(PSA)のスクリーニング検査の勧奨を1回行うと、これを行わない通常の診療と比較して、15年後の前立腺がんによる死亡が有意に減少するもののその差はわずかであり、全生存への効果は認めないことが、ブリストル大学のRichard M. Martin氏らの解析で明らかとなった。

同研究で、PSAスクリーニング検査の勧奨から追跡期間中央値10年の時点においては前立腺がん死を抑制しないことが示されており、今回は、追跡期間中央値15年の結果を報告した。

介入群では、参加者はPSAスクリーニング検査の勧奨を1回受け、検査でPSA値が3.0~19.9ng/mLの場合は経直腸的超音波ガイド下生検を提示された。対照群の参加者は、標準的な管理を受け、PSA検査の勧奨は行われなかった。

前立腺がん特異的死亡率、わずか0.09%の差
41万5,357例(平均年齢59.0歳)の参加者のうち、今回は40万8,721例(98%)を解析に含めた。介入群が18万9,326例、対照群は21万9,395例だった。

介入群のうち1万2,013例、対照群のうち1万2,958例が前立腺がんの診断を受け、15年累積リスクはそれぞれ7.08%(6.95~7.21)および6.94%(6.82~7.06)であった。

追跡期間中央値15年の時点で、前立腺がんで死亡したのは、対照群が1,451例(0.78%、0.73~0.82)であったのに対し、介入群は1,199例(0.69%、0.65~0.73)と有意に少なかったが、その差はわずか0.09%であった。

また、対照群と比較して、介入群では低グレードの前立腺がんと限局病変の検出率が有意に高かったが、中グレード、高グレード、局所浸潤、周囲臓器浸潤・遠隔転移病変の発生率には差を認めなかった。

また、前立腺がん死のうち、介入群の8例(0.7%)と対照群の7例(0.5%)が、診断的生検または前立腺がんの治療に関連した有害事象によるものであった。

著者は、「前立腺がんのスクリーニング検査を検討する政策立案者は、前立腺がんの過剰診断や過剰治療に関連する潜在的な有害作用との比較で、このわずかな死亡の減少を考慮する必要がある」としている。


PSA検査は、採血のみの検査で、血液中にある前立腺に特異的なタンパク質の一種「PSA」の値を測定します。スクリーニング検査のなかで、もっとも精度が高く、簡単に受けることができます。PSAの値が高くなるにつれ、前立腺がんである確率も高くなっていきます。PSAの値は、前立腺肥大症や前立腺炎でも高値になることがあるため、基準値以上の値が出ると、前立腺がんであるかを確定するための、より詳しい検査を受けることになります。以下は、日本泌尿器科学会の基準です。

本研究は、(排尿障害などの症状があって泌尿器科を受診するヒトに対してPSA検査をするのは良いが)、症状のない健康なヒトに健康診断(人間ドックや前立腺がんのスクリーニング)としてPSA検査を行うことは有効ではないということだと思います。過剰診療による死亡もあり得るのは嫌ですね。

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