以下は、「『熟議カケアイ』とは」にある説明です。
「熟議カケアイ」は、学校・家庭・地域の教育現場の方々の声を集め、「熟議」を通じて教育政策を創り出す、文部科学省公式インターネットサイトです。
個人的にも少しは知っている榎木英介さん達がやっているScience Support Association(SSA)が発行するメールマガジンに、「熟議カケアイ」についての記事があったので、サイトを覗いてみました。
以下は、榎木さんの記事の抜粋です。
現在、文部科学省の「熟議カケアイ」にて、科学技術政策に関する二つの議論が進行中だ。
一つは「我が国の研究費を使いにくくしている問題点は何か?」もう一つは「国立大学法人の課題やその改善方策は?」だ。
熟議とは
【step1】個々人の本音をぶつけ合い共通課題を発見していく
【step2】共通課題について関係者それぞれの立場や役割を相互理解する
【step3】それぞれが当事者意識を持って議論に関わることによって共通課題についての解決方法を編集・創造する
【step4】ボランタリーに改革アクションが始まるプロセスであり、ツール
とのことだという。
榎木さんの文章で気になったところをそのまま引用します。
研究に関わる人たちは是非積極的に意見を言ってほしい。ところが、残念ながら科学技術に関する熟議が盛り上がっていない。上で科学の熟議が87件及び162件と述べたが、これは教育の熟議に比較して圧倒的に少ない。
twitter上で意見を聞いたが、熟議の登録の際に、個人情報を要求されすぎているのがネックになっているという意見が多かった。また、熟議のコメントには発言者の都道府県名が表示される。研究者の場合、●●県でこんな発言をしているのはあのひとだ、と個人を特定されやすい。これが自由闊達な発言を妨げているという。
非常に残念だが、特に若手研究者を中心として、政策などに意見を言うことがマイナスになる状況がある。本来研究者は自由闊達な意見を言うことを旨とすべきなのだが、プロジェクト単位の雇用が強化されるなかで、配下の人間が自由に発言することをよしとしない研究指導者、PIがいるのは事実だ。
twitterではこんな発言があった。
発言したい若手はたくさんいると思います。でも、個人を特定することがすごく怖いんです。万が一この発言が上司にばれたら、教授にばれたら、コミュニティーから弾き出されるかもしれない。職を失うかもしれない。でもそんな気持ち、公務員の方には理解できないですかね?
こんな現実が本当に情けないし、悲しい。
このtwitterの発言をみて、我々のコミュニティーについていろいろ考えました。
若手が上司や教授を怖がり、教授が学部長や文科省を怖がり、学部長や文科省がマスコミを怖がる。公務員の方にも十分理解できると思います。
生命科学の場合、たいした能力がなくても、多額の研究費があれば、コミュニティーにおける体裁を整えることができます。だから、何かのきっかけで、多額の研究費を受ける立場を得た研究者は、その立場を守ろうとします。
1人のボスが1億円自由に使えるシステムはできても、その下で働く独立してもおかしくない若手20人が500万円自由に使えるシステムができないのは、このような理由だと思います。
上記のように、「熟議カケアイ」の議論の1つは、「我が国の研究費を使いにくくしている問題点は何か?」です。
研究費が使いにくい問題よりも、どう配分するかの問題の方が研究者の関心は圧倒的に高いと思います。しかし、現状の「熟議カケアイ」に載せても発言は少ないでしょう。
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