指導教授が博士論文を審査する制度について

博士号剥奪、学位論文の4割盗用

以下は、記事の抜粋です。


工学博士の学位を取得した論文で「悪質な盗用」をしたとして、東京大学が、博士の学位を取り消した大学院工学系研究科のトルコ人研究者、アニリール・セルカン助教について、文部科学省が東大に対し、学位の審査体制に不備がなかったか調査・報告するよう指示したことがわかった。東大は今後、懲戒処分を検討する。

博士の学位剥奪は3月2日付で、東大史上初めて。大学側の事情聴取に対し、助教は盗用を認めた。助教は自身のブログなどで、米航空宇宙局(NASA)から、トルコ人初の宇宙飛行士候補に選ばれたとも説明しているが、NASAは読売新聞の取材に「該当者はいない」と回答している。

5日の東大の発表によると、助教が2003年に博士の学位を取得した際の論文「宇宙空間で長期居住を可能にする軌道上施設に関する研究」全376ページのうち、4割にあたる149ページで他人が書いた文献やデータの盗用が見つかった。出典を明記せず、自分の成果のように装った部分もあった。

助教は1999年に工学系研究科(建築学専攻)の研究生になり、05年に同科の助教(当時は助手)に採用されたが、その後、論文の不正を指摘する情報が寄せられていた。

助教は計9年近い東大在籍期間を通じ、工学系研究科の同じ研究室に所属。博士論文は同科の5人の教員が審査したが、審査を取りまとめたのは、この研究室の指導教授だった。東大によると、一部の学科・専攻では、審査の透明性を高めるため、指導教官が審査委員に入ることを認めていないケースもあるが、工学系研究科では兼任することは珍しくないという。


神戸大学医学部でも、博士課程で研究を指導した教授が、論文を審査して博士号を授与するかどうかを決める主査をしていました。主査以外に2名の他講座の教授が副査として審査に参加していましたが、主査が審査を取りまとめていました。

2003年に千葉大学から来られたS先生は、教授会で、「自分が指導した論文を自分で審査するのはおかしい」と強く主張されました。その結果、博士号授与が始まって以来、何十年も続いていた学位審査制度が改正され、指導教官(現在は、指導教員)は、審査委員になることができなくなりました。

今から考えればとんでもない制度でしたが、私もS先生に指摘されるまでは何の疑問も抱きませんでした。今回のニュースで、このような制度がまだ東大に残っていたことに驚きました。
おかしいと思うことはあるのですが、教授会で発言するのはしんどいので、ついつい黙ってしまいます。「あの時のS先生は偉かった」とあらためて思うと同時に、ついつい流されている今の自分を反省しています。

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