以下は、記事の抜粋です。
東京大学は4月5日、米国の「セル」誌などに掲載された分子細胞生物学研究所の加藤茂明教授らの論文に不正があったとの通報を学外から受け、調査を進めていることを明らかにした。加藤教授は論文執筆の責任を取り、3月末で辞職した。
同大によると、今年1月、加藤氏の関わった論文24編に捏造や改ざんの疑いがあるとの通報が、学外から寄せられた。通報に24編の掲載時期や表題が具体的に記されていたことなどを同大は重視し、科学研究行動規範委員会で、研究データの捏造、改ざん、盗用といった研究不正の有無を視野に、調査を始めた。
加藤氏らは、「セル」に2003年に掲載された論文について、「図表がデータを正確に表していない」として3月に取り下げていた。同大は、同委員会の結論を待って、処分するかどうか決める。加藤氏は「すべて大学側に判断をゆだねており、現在はコメントすることはできない」と話している。
サイエンス・サポート・アソシエーション(SSA)の榎木さんがこのニュースについてSSAのサイトやメルマガで触れられています(記事をみる)。
榎木さんも紹介していますが、どのような研究不正が行われていたのかについては、「東京大学 分子細胞生物学研究所 の論文捏造・改ざん・不正疑惑――東京大学 分生研 加藤茂明教授の研究室による類似画像掲載論文について (うっかりミスか?偶然か?研究不正か?)」というおそらく告発者のサイトに非常に詳しく書かれています(サイトをみる)。さらに、このニュースをめぐる多くの方々のブログ記事などもリンクしたtwitterサイトでみることができます(サイトをみる)。
榎木さんは、「今回問題なのは、加藤元教授が日本分子生物学会で研究不正防止について語ってきた方だということです。」として、加藤元教授の「正しい知識が捏造を防ぐ データを正確に解釈するための6つのポイント」と題する記事の以下の文章を引用しています。
「筆者の所属する大学で起こった不幸な論文捏造事件の報告書を読むと,研究グループ内での議論に乏しく,実験データに対する批判や評価が当事者どうし以外にはなされなかったようであり,これは筆者にとって驚きであった.ふだんから会話を心がけるだけで,実験データ解釈の鍛練になるのである.よい生命科学者は,一般に,人とのコミュニケーション能力が高い.」
そして、「加藤元教授の研究室では、果たしてどのような会話がなされてきたのでしょうか。」という疑問を投げて、「文科省や政府の指導を待つのではなく、科学コミュニティ自ら、かなりの覚悟をもってこの問題に取り組まないと、科学コミュニティの自主性が危うくなります。」と結んでおられます。
また、「研究不正が起きる根本原因について」、「東大教授、Dr. Kato 辞職の顛末」、「加藤研問題への柳田充弘先生のツイートまとめ」、「加藤茂明の論文不正や辞職の影響について」などの多くのブログ記事でも、上記の問題やその他の問題が指摘され議論されています。
これらを読むと、加藤研では20以上の論文に関連してデータの捏造が行なわれていたこと。東大だけではなく捏造論文の共著者が在職する群馬大や筑波大などが関係していること。告発者は以前から警告していたが、ScienceInsider誌など海外で情報が取り上げられるまで東大は不問に付していたこと(記事をみる)。などなどは、間違いなく事実だと思われます。こういう状況では、調査が終わるまで辞職届を受理しないのが普通だと思いますが、なぜ東大はあっさりと受理したのでしょうか?
「加藤さんは辞職すべきでなかった。どんなにつらい日々があってもそれに対抗するという道,自分のすべてをさらけ出す、激しくバッシングを受けるのも覚悟するのがベストだったと思います。」という柳田先生のご意見にまったく同感です。しかし、もう辞めてしまったものはどうしようもないので、各大学の調査委員会に期待しましょう。特に、東大の調査委員会の報告は世界が注目しています。どんな不都合な事実も隠蔽せず、全ての事実を明らかにして欲しいと思います。
コメント