AIによる機械学習を用いた抗老化薬の発見

AIが老化を予防する新たなアンチエイジング薬候補をたった5分で発見
以下は、記事の抜粋です。


AIが新薬開発を大幅にスピードアップしてくれるかもしれない。エディンバラ大学のバネッサ・スメール=バレート氏らは、AIを駆使することで、ほんの5分で老化を予防する新たなアンチエイジング薬の候補を探し出すことに成功したという。

私たちの体を老化させる原因の1つが、「ゾンビ細胞」と呼ばれるものだ。この細胞は生きてはいるが、それ以上細胞分裂する力を失っている。困ったことにこの細胞は、周囲の細胞を老化させようとするのだ。まるでゾンビが新しく仲間を作るかのように。

だから紫外線や化学物質によるダメージなどで、体の中にゾンビ細胞が蓄積すると、糖尿病・変形性関節症・がんといったさまざまな病気を引き起こすようになる。そうしたゾンビ細胞を殺すアンチエイジング薬のことを「老化細胞除去薬(セノリティクス)」という。理想的には、ゾンビ細胞を速やかに退治しつつ、健康な細胞にはなんの影響もない、そんな薬がいい。

スメール=バレート氏らは、AIにすでに知られている”老化細胞除去薬”と”普通の薬”のデータを与えてみた。ここから、この2種の薬の違いを学習させるのが狙いだ。もしもAIがゾンビ細胞を倒す薬の成分(分子)の特徴を見分けられるのならば、初めて目にした成分でも、それが老化細胞除去薬として効果があるかどうか予測できるはずだ。

今回の実験では、いくつかのテストを経て選び出された一番性能のいいAIモデルに、4340個の分子を見せている。するとAIはたった5分で21個の候補を挙げてきた。同じことを手作業でやろうとしたら、数週間の集中作業と薬の購入費用900万円のほか、実験機材の購入費用やそれを準備する手間がかかっただろうという。

こうして絞り込まれた分子の実力を実験で試してみると、21種のうち3種類(オレアンドリン、ペリプロシン、ギンクゲチン)は本当に有望であることがわかったという。その3つの分子は、老化細胞を除去しつつ、それでいて健康な細胞にはほとんど影響がないのだ。さらなる実験では、一番有望なのはオレアンドリンであることも突き止められている。

こうしたAIの威力は素晴らしく、質のいいデータがあれば、新薬開発のプロセスを一気に加速してくれる可能性を秘めているとのこと。スメール=バレート氏らは今、AIが見つけた3つのアンチエイジング薬候補を人間の肺組織で試しているところだ。2年以内を目処に、次の成果を報告したいとのことだ。


以下は、論文の要約です。AIが考えて、ロボットが実験をする時代が来そうです。


細胞老化は、加齢や、がん、2型糖尿病、変形性関節症、ウイルス感染などの様々な疾病過程に関与するストレス応答である。老化細胞を標的として除去することへの関心が高まっているにもかかわらず、よく特徴付けられた分子標的がないため、わずかな殺老化薬しか知られていない。ここでは、公開データのみを用いて学習させた、費用対効果の高い機械学習アルゴリズムを用いて、3つの老化防止剤を発見したことを報告する。我々は、様々な化学ライブラリーを計算によってスクリーニングし、ギンクゲチン、ペリプロシン、オレアンドリンの老化促進作用を、様々な老化様式のヒト細胞株で検証した。これらの化合物は、既知の老化防止剤に匹敵する効力があり、オレアンドリンは、クラス最高の代替品と比較して、標的に対する効力が向上していることが示された。私たちのアプローチは、薬剤スクリーニングのコストを数百分の1に削減し、人工知能が小規模で不均一な薬剤スクリーニングデータを最大限に活用できることを実証し、早期創薬への新しいオープンサイエンスアプローチへの道を開くものである。

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