医療裁判にも影響か?肝機能の指標がALT>30に

医療裁判にも影響か?肝機能の指標がALT>30に
以下は、記事の抜粋です。


肝機能検査として血液検査で汎用されるALT値。今後、これが30を超えていたら、プライマリ・ケア医やかかりつけ医による肝疾患リスクの確認が必要となる―。6月に開催された第59回日本肝臓学会総会にて、ALT>30を指標とする『奈良宣言』が公表された。これは、かかりつけ医と消化器内科医が適切なタイミングで診療連携することで患者の肝疾患の早期発見・早期治療につなげることを目的に、さまざまなエビデンスに基づいて設定された。

「ALT>30」の根拠と利点
ALTの新たな指標設定の理由は、以下のとおりである。

(1)シンプルで健診や一般診療で汎用されている項目
(2)英文も含めて基準値に関する文献が多数存在する
(3)わが国の特定保健診査(特定健診)および人間ドック学会の基準値はALT30以下
(4)特定健診や人間ドック学会の基準値は日本消化器病学会肝機能研究班の意見書に基づいて決定

学会が宣言した指標、裁判にも影響か
宣言後に本指標を無視してしまうと、注意義務違反が生じる場合もあるという。「肝硬変や肝臓がんは年数を経て病態が進行していく疾患なので、ある患者がこの宣言以降に人間ドックでALTが35だったとしましょう。しかし、医師は基準値内だからと次の行動を起こさず、翌年にその患者が肝硬変になって“医師に検査を進めてもらえなかった”と医療裁判を起こしたらどうだろうか」と例示し、「ある弁護士からは医師側が敗訴する可能性が十分ありうるといった見解を受けたため、医療安全の観点からも医療者に周知していく必要がある」と医師側のリスクを指摘した。

なお、健康成人の約15%でALT>30を満たすとの報告があることから、この宣言がプライマリ・ケア医やかかりつけ医の診療に影響を与えうるとも学会は見解を示している。さらに、厚生労働省が作成した令和6年度版の『標準的な健診・保健指導 プログラム』での健診検査項目の保健指導判定値及び受診勧奨判定値において、保健指導判定値(AST≧31)として記されている点は、本指標の明確な根拠である。


「AST(GOT)」と「ALT(GPT)」は、どちらもタンパク質を分解してアミノ酸をつくる酵素です。ALTはほとんどが肝臓に存在するが、ASTは肝臓だけでなく心臓や赤血球、腎臓、筋肉などにも存在するので、ASTとALTの両方が血液中で上昇している場合には肝臓の病気が疑われるが、ASTのみ上昇している場合には心筋梗塞や筋肉の破壊を疑われるとされています。

ALTは、アルコールの過剰摂取や肥満、薬剤の副作用やウイルスによる肝機能障害などで上昇します。高値を示した場合は、追加採血に加えて、超音波検査やCT検査などの画像検査を行うことになると思います。

記事に書かれているように、基準値が30を超えて設定されている以下のような例もまだあるので、かかりつけ医などは気を付ける必要があると思います。

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