ゾルピテム(酒石酸ゾルピデム:zolpidem)は、1992年にフランスで販売が開始され(サノフィ・アベンティス社)、日本ではアステラス製薬によって2000年8月から販売されています。 日本ではマイスリー、欧州ではStilnox、アメリカではAmbienという商品名で販売されています。
他の睡眠薬や抗不安薬と少しちがうようなので、Wikiで調べてみました。以下は、Wikiに書かれている作用機序です。
GABA-A受容体複合体のベンゾジアゼピン結合部位(ω受容体)に働き、γ-アミノ酪酸 (GABA) の作用を増強する。ω受容体には2つのサブタイプがあり、ω1受容体は催眠鎮静作用に、ω2受容体は抗痙攣作用、抗不安作用及び筋弛緩作用に深く関与しているものと考えられている。
ゾルピデムはトリアゾラム(ハルシオン)に代表されるベンゾジアゼピン系睡眠薬と比較してω1選択性が高く、催眠鎮静作用に比べて、抗不安作用、抗痙攣作用や、筋弛緩作用が弱いのが特徴である。また、ベンゾジアゼピン系睡眠薬に比べ、反復投与しても耐薬性、依存性が形成されにくい。
上記のω1(あるいはBZ1)受容体やω2(BZ2)受容体という概念は、古典的な薬理学実験にもとづく抽象的なものですので、分子レベルで説明します。
GABA-A受容体は、5個のサプユニットからなる5量体の塩素イオンチャネルを形成しています。遺伝子レベルでは、17種類のサブユニット(α1-6,β1-4,γ1-3,δ,ε,π,θ)があります。
GABA-A受容体は、少なくとも各1個のα、βおよぴγサブユニットをもっています。5個のサブユニットの組み合わせが多様な受容体をつくると考えられています。
ジアゼパムなどのベンゾジアゼピン(BD)系薬物は、GABA-A受容体に結合しその作用を増強します。BDが受容体に結合するためには、γ2サブユニットが必須で、さらにα1、α2、α3またはα5サブユニットが必要です。
ゾルピデムは、α1サブユニットを含むサブタイプアセンブリをもつGABA-A受容体のBD結合部位(αサブユニットとγ2サブユニットのインターフェイスに存在)に高い親和性を示しますが、α2、α3あるいはα5サブユニットをもつGABA-A受容体に対する親和性は低いです。
α1サブユニットをもつGABA-A受容体は、ラットの場合、脳のほぼすべての領域に存在し、全GABA-A受容体の40%以上を占めています。このタイプのGABA-A受容体が催眠作用と鎮静作用の発現に関与すると考えられており、ω1(BZ1)受容体と呼ばれていたものの分子レベルでの実体だと思われます。
一方、α2、α3またはα5サブユニットをもつGABA-A受容体は、抗不安作用、抗痙撃作用、筋弛緩作用などの発現に関与していると考えられています。これがω2(BZ2)受容体と呼ばれていたものだと思われます。
現在臨床で用いられている薬物で、GABA-A受容体のサブタイプアセンブリを区別することが明らかにされているものはゾルピデムだけですが、BDやBD類似薬の多くは睡眠薬あるいは抗不安薬のどちらかに分類されています。
これらの睡眠薬あるいは抗不安薬として用いられている薬物が、それぞれω1(BZ1)タイプあるいはω2(BZ2)タイプにあてはまるのか?今のところ、確かなデータはなさそうです。
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