なぜ冬になるとインフルエンザや風邪が流行するのか?
以下は、記事の抜粋です。
日本を含む温帯地域では、呼吸器感染症の流行は冬にピークに達します。この現象については、「冬になると他の人と一緒に屋内で過ごす時間が長くなり、空気の換気も不十分になるため、集団内でウイルスが広がりやすくなる」と説明されることもあります。
しかし、中には「冬だからといって屋内にいる時間が長くなるわけではないし、換気しないのは夏も同じではないか」と思う人もいるかもしれません。Live Scienceによると、冬になると風邪を引きやすくなる理由には行動の変化だけでなく、明らかな生物学的メカニズムの変化も関連しているとのこと。
鼻の内側を覆っている上皮細胞は、空気と一緒に吸い込まれるウイルスの侵入を防ぐ最前線です。通常、ウイルスの感染に反応した鼻の内側の上皮細胞はextracellular vesicle(EV:細胞外小胞)と呼ばれる小胞を分泌します。
細胞外小胞には通常の細胞より20倍も多い受容体が含まれており、ウイルスが遺伝物質をコピーして複製するのを防ぐマイクロRNAの量も13倍多く含まれています。このマイクロRNAの働きにより、ウイルスが増殖して細胞に侵入するのが防がれているそうです。
人間が温かい部屋から寒い屋外に出た場合、鼻孔の温度はセ氏37度から32度まで急激に低下します。これと同様の温度低下を鼻組織のサンプルに適用して免疫応答を観察すると、上皮細胞から分泌される細胞外小胞の量が42%も減少し、受容体やマイクロRNAも半分以下になってしまうことが判明。その結果、呼吸器系のウイルスは複製能力が実質的に2倍に増加することがわかりました。
この研究結果は、マスクなどで顔を覆うことには「鼻や口にウイルスが侵入するのを防ぐ」という点に加え、「鼻の前に空気の層を作ることで鼻の上皮細胞を温め、免疫機能の低下を防ぐ」という2重のメリットがあることを示唆しています。
また、気温の低下だけでなく湿度の変化もウイルスの感染性に影響を及ぼします。一般に冬の室内では、ヒーターやエアコンを使って冷えた空気を暖めていますが、温度が高くなれば空気中の飽和水蒸気量が多くなり、相対湿度は低くなります。
相対湿度10~20%の乾燥した環境で生活するマウスは、相対湿度50%で生活しているマウスと比較して、インフルエンザの感染と戦う能力が低いことが明らかになっています。これは、上皮細胞に生えている繊毛がウイルスなどの粒子を排除する「粘膜繊毛クリアランス(MCC)」という防御機構が、乾燥に伴ってうまく働かなくなってしまうためです。
上記の研究はマウスを対象にしたものですが、人間を対象にした同様の研究でも、乾燥した条件下では繊毛が病原体を取り除く能力が低下し、感染症が広がりやすくなる可能性があると示唆されています。
冬はマスクをして、部屋の湿度を上げると風邪やインフルエンザに罹りにくいという話のようです。コロナもしぶとく蔓延っているので気を付けてください。
コメント