以下は、記事の抜粋です。
米コネチカット大学は1月12日、同大所属の教授について、科学専門誌11誌に発表した赤ワインの健康効果を主張する論文に100を超えるデータの改ざん・捏造があったことが明らかになったとして、懲戒解雇したと発表した。
同大が「145か所のデータの改ざん・捏造が明らかになった」と糾弾したのは、同大医療センター外科部門に所属していたディパク・ダス(Dipak Das)教授で、同センター循環器病研究所のトップでもあった。
同大では、ダス教授の論文に不正が疑われるという匿名の通告を受け、2008年から3年をかけて同教授の論文を調査してきた。これまでに同大は、ダス教授の論文が発表された科学専門誌11誌に書簡を送り、また同教授への連邦政府の研究費助成費89万ドル(約6800万円)の受け取りを辞退した。
1984年から同大に所属していたダス教授は、赤ワインに含まれる抗酸化物質レスベラトロールや潰したニンニクが、心臓の健康に良いとする論文を発表してきた。レスベラトロールには消炎作用や、神経変性疾患や糖尿病に対する予防作用、心臓の健康を促進する効果などがあるとされている。
コネチカット大学は、”UConn Today”という大学ニュースで”Scientific Journals Notified Following Research Misconduct Investigation”という声明を発表しています(声明をみる)。
上の記事には、「ダス教授の論文は既に数百の論文に引用されているが、ダス教授自身が投稿したことがあるのは学界でも知名度の低い学術誌ばかりで、レスベラトロール分野全体で読まれているわけではないと、米アルバート・アインシュタイン医科大学のニール・バルジライ(Nir Barzilai)氏は指摘。」という文章があったので、どんな学術誌か調べてみました。以下にその誌名を紹介します。
American Journal of Physiology – Heart & Circulatory
Antioxidants & Redox Signaling
Cellular Physiology & Biochemistry
Free Radical Biology
Free Radical Research
Journal of Agriculture and Food Chemistry
Journal of Cellular & Molecular Medicine
Journal of Nutritional Biochemistry
Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics
Molecular & Cellular Cardiology
Molecular & Cellular Chemistry
太字にした雑誌は、私も投稿して掲載されたことがある雑誌ですが、バルジライ氏によると「知名度の低い学術誌」だったとは残念です。
ところで、「145か所のデータの改ざん・捏造」の内容は、大半が”photo-editing fraud”で、”intentional acts of data falsification and fabrication, designed to deceive”、つまり、ストーリーに都合の良い図を捏造して、意図的に読者をだまそうとするものだと、大学は断定しています。例えば、全然関係ない別の実験のウエスタンのバンドから、“Photoshop”などのフォト・イメージソフトを使って研究のストーリーにそったウエスタンの新しい図を作り出すといった作業です。
報告が例としてあげているのは、Das et al [2006] J Mol Cardiol 41, 248‐255のFig 4で、この図の中の全てのバンドが作り物・偽ものだと結論しています。
都合の悪いことを隠蔽せず、真実を明らかにしようとする姿勢が大切だと思います。同じような告発を受けている日本の大学は、どのように対応するのでしょうか?
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コメント
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tak先生
お早う御座います、寒い日々の講義、研究活動お疲れ様です。
NHKの放送で紹介された後、海外から取り寄せ服用、その内疑問を抱き途中で廃棄。
まだ研究段階?、医薬品としてのエビデンス公表待ち。
ポリフェノールは目に良いと眼科医に聞き長年服用中。
人類の寿命が伸びると国家は破滅ですね。
健康維持に効果あるととしても本来の寿命が延びるなんてことはあり得ないと信じてます。
taniyan