ノバルティス アフィニトールに難病「結節性硬化症」の効能追加で承認取得
以下は、記事の抜粋です。
ノバルティスは11月21日、抗がん剤アフィニトール錠5mg、同2.5mg(一般名:エベロリムス)の効能・効果に、難病の「結節性硬化症」を追加する承認を取得したと発表した。この適応を持つ薬剤は国内で初めて。
適応は、結節性硬化症に伴う「腎血管筋脂肪腫」と「上衣下巨細胞性星細胞腫」。結節性硬化症は、体のあらゆる箇所に良性の腫瘍を引き起こす疾患で、患者は国内に推定で1万5000人。手術が適応にならない場合の治療薬はなかった。腎血管筋脂肪腫は最大80%発症し、重度の内出血や腎不全を起こすこともあるという。上衣下巨細胞性星細胞腫は脳に発症し、最大で20%の発症率という。
発表によると、腎血管筋脂肪腫の治験では、奏効率はプラセボ投与群では0%に対し、エベロリムス投与群では42%。上衣下巨細胞性星細胞腫の治験では、奏効率はプラセボ投与群では0%に対し、エベロリムス投与群では35%だった。
結節性硬化症は遺伝子の変異によって、腫瘍細胞の分裂や腫瘍の成長に必要な血管新生などに関与するmTORを活性化することで引き起こされるといわれる。同剤は、そのmTORの機能を阻害する作用により効果を発揮するという。
9月の記事で米国FDAが結節性硬化症に伴って発生する上衣下巨細胞性星細胞腫(SEGA)の治療薬として、エベロリムスの小児用製剤「アフィニトール小児用分散錠」(2mg、3mg、5mg)を承認したことを紹介しました(記事をみる)。
結節性硬化症(Tuberous sclerosis、TS)は、全身の過誤腫を特徴とする全身性疾患で、知能低下、癲癇発作及び顔面の血管線維腫を三主徴とする常染色体優性遺伝を示す病気です。しかし、これら三主徴は必ずしも高頻度あるいは特異的なものではなく、これら三主徴以外にも皮膚、中枢神経系等ほぼ全身に種々の過誤腫を形成し、皮膚においても、白斑等種々の変化に富んだ病変が認められるそうです。
TSの原因遺伝子として、1993年にTSC2遺伝子が、1997年にTSC1の遺伝子が同定されました。これらは、まったく異なる遺伝子ですが、臨床的にTSC1あるいはTSC2の変異による病態を区別することはできないそうです(難病情報センター)。
TSC1の遺伝子は130KDaのハマルチン(Hamartin)を、TSC2の遺伝子は198kDaのチュベリン(Tuberin)をコードしており、TSC1/TSC2複合体は、低分子量GTP結合タンパク質RhebのGAPとして作用し、Rhebを不活性化します。Rhebは、その下流のmTORを中心としたmTORC1複合体を活性化することにより、mTORC1の下流にあるS6K1などを介して細胞の増殖やアミノ酸代謝などの多様な細胞現象を制御しています。TSC1/TSC2の変異によりTSC1/TSC2複合体のGAP活性が低下した結果、mTORC1活性が異常に高くなることが病気の本態ではないかと考えられています。
エベロリムス(everolimus)は、ラパログ(rapalogs)とよばれるラパマイシン(公式一般名:シロリムス(sirolimus))アナログの1つです。ラパログには、他にtemsirolimus、deforolimusなどがあります。ラパマイシンやラパログは、FKBP-12と結合し、mTORの活性を阻害するのですが、すべてのmTOR活性を阻害するのではありません。上記のmTORC1複合体は阻害しますが、もう1つのmTORC2複合体は阻害しません。
mTORの活性を直接阻害する薬物もありますが、臨床にはまだ使われていません。ラパマイシンもエベロリムスも本質的には同じ薬物なので、このあたりの薬物はまだまだ開発の余地がありそうです。
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