持ち越し効果リスクが低いオレキシン受容体拮抗薬「ボルズィ錠」
以下は、記事の抜粋です。
「ボルノレキサント水和物(商品名:ボルズィ錠2.5mg/5mg/10mg)」は、オレキシン受容体に選択的に作用する不眠症治療薬であり、消失半減期が短いことから翌日への持ち越し効果の懸念が少ないことが期待されています。
<効能・効果>:不眠症の適応で、2025年9月1日に製造販売承認を取得しました。
<安全性>:副作用として、傾眠(3%以上)、悪夢(1~3%未満)、倦怠感、血中乳酸脱水素酵素増加、浮動性めまい、睡眠時麻痺(いずれも1%未満)があります。
主にCYP3A4で代謝されるため、イトラコナゾール、ポサコナゾール、ボリコナゾール、クラリスロマイシン、リトナビル含有製剤、エンシトレルビル フマル酸、コビシスタット含有製剤、セリチニブを投与中の患者は併用禁忌です。
現在までに、スボレキサント、レンボレキサントおよびダリドレキサントの3剤が販売されていますが、半減期が比較的長いため、翌日への持ち越し効果を引き起こす可能性が課題とされています。
特徴として、オキサアジナン環の導入により脂溶性が低減されており、消失半減期(t1/2)は約2.13時間と短く設計されています。そのため、翌日への持ち越し効果が生じる懸念が少ないことが期待されています。
スボレキサント(ベルソムラⓇ)の半減期は約12時間、レンボレキサント(デエビゴⓇ)は約47.4〜60.1時間、ダリドレキサント(クービビックⓇ)は約6.6〜8時間です。
ボルノレキサント(ボルズィⓇ)は、半減期が2時間ちょっとと短いので翌朝に眠気が残る「持ち越し効果」が生じにくいのが一番の特徴だと思います。
オレキシン受容体拮抗薬は、ベンゾジアゼピン系睡眠薬の最大の問題である依存性の心配が少ないとされています。これまでの3薬の中では、ダリドレキサント(クービビックⓇ)が半減期が短く食事の影響を受けにくいので一番使い易いと思っていましたが、同じように食事の影響を受けにくいとされ、さらに半減期が短いので、この新薬が取って代わる可能性があります。
他のオレキシン受容体拮抗薬と同様に主にCYP3A4で代謝されるため、グレープフルーツや併用薬などの影響を受けることは注意する必要があると思います。オレキシン受容体拮抗薬には悪夢という副作用がありますが、半減期が短いので明け方にみることが多い夢への影響はどうなるのでしょうか?



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