65歳以上の高齢者、NSAIDsの腎機能への影響は?
以下は、記事の抜粋です。
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は、疼痛管理に広く使用されているが、とくに高齢者において腎毒性のリスクが懸念される。NSAIDsと急性腎障害の関連が知られているが、長期使用が腎機能に与える影響については、これまで一貫した見解が得られていない。
韓国・Samsung Medical CenterのJung-Sun Lim氏らの研究グループは、韓国の高齢者コホートを10年間追跡した大規模な研究により、NSAIDsの長期使用が腎機能に与える影響を検討した。その結果、NSAIDsの定期的な使用が高齢者の慢性腎臓病(CKD)発症リスクを高め、腎機能の低下を加速させたことが示された。
対象は、ベースライン時に腎機能が正常(推算糸球体濾過量[eGFR]60mL/min/1.73m2以上、血清クレアチニン0.4~1.5mg/dL)であった65歳以上の成人4万1,237例とした。主要評価項目は、追跡期間中のCKD発症(eGFR 60mL/min/1.73m2未満かつベースラインから10%以上低下)とした。
主な結果は以下のとおり。
・傾向スコアマッチング後のCKD発症率(/1,000人年)はNSAIDs使用群20.18、対照群16.25で、NSAIDs使用群は対照群と比較してCKD発症リスクが有意に高かった(ハザード比[HR]:1.46)。
・NSAIDsの種類別にみたサブグループ解析において、COX-1阻害薬(HR:1.53)、COX-2阻害薬(HR:1.61)のいずれも、CKD発症リスク上昇と関連していた。
・eGFRの経時的変化を追跡した結果、NSAIDs使用群は追跡2年目以降の腎機能低下が速い傾向にあった。
・末期腎不全(ESRD)の発症は、NSAIDs使用群4例、対照群1例にみられたが、両群間に有意差は認められなかった。
本研究結果について、著者らは「本研究において、高齢者のNSAIDsの定期的な使用は、CKD発症リスクを上昇させ、腎機能の低下を加速させた。高齢者へのNSAIDsの投与は慎重に行い、投与する場合は腎機能を定期的にモニタリングすることが推奨される」と結論付けた。

元論文のタイトルは、”Effects of NSAIDs on Early CKD Development: A 10-Year Population-Based Study Using the Korean Senior Cohort(NSAIDsが早期慢性腎臓病発症に及ぼす影響:韓国高齢者コホートを用いた10年間の集団ベース研究)”です(論文をみる)。
日本においてNSAIDs貼付剤は広く普及しており、処方薬・市販薬として身近な存在です。ロキソニン®やバンテリン®、サロンパス®などの製品が広く使われています。特に整形外科領域では非常に頻繁に処方されています。一方、欧米におけるNSAIDs貼付剤の普及度は日本よりも低く、市販・処方ともに貼付剤の種類は限られており、内服薬が中心です。またロキソニンが日本独自の「ガラパゴス薬」であり、アメリカではほとんど使われないことなどが原因と考えられます。
NSAIDs貼付剤と腎機能の関係はどうなんでしょうか?


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