肺動脈性肺高血圧症(PAH)において、肺血管リモデリング(細胞増殖)抑制を標的とする世界初のアクチビンシグナル伝達阻害薬ソタテルセプト(商品名:エアウィン)

肺高血圧症へのソタテルセプト、中リスク以上なら追加検討を
有効そうな新薬の紹介ですが、診断が難しく重要です。自分用のメモです。


肺動脈性肺高血圧症(PAH)において、肺血管リモデリング(細胞増殖)抑制を標的とする世界初のアクチビンシグナル伝達阻害薬(ASI)ソタテルセプト(商品名:エアウィン)が2025年8月18日に発売された。この疾患領域については2025年3月に診療ガイドラインがされており、ソタテルセプトは推奨や治療アルゴリズムにも掲載され、4系統目の薬剤としての期待が記されている。

PAHを疑ったらまずは心電図とX線を
肺高血圧症(PH)は原因や病態などにより第1~5群に分類される。PAHは第1群に位置し、典型的なPHの臨床像を示す疾患群とされ、特発性(原因不明)のものが国内外で最も多く臨床的に重要である。初期症状として息切れ、動悸、めまいなどがあり、進行すると右心不全の症状(むくみ、咳、失神、チアノーゼなど)を来す。PAHでは右心室の筋肉に負荷が生じ、心室壁の肥厚に伴い右心室肥大となる。これまでの疫学調査によれば男女比1:2で20~40代の女性に多いと言われていたが、近年では高齢者や男性での診断率が増加傾向にある。実際、国内での指定難病の受給者証所持数は2004年の約750例から2023年の4,682例に増加している。

その一方、PAHの疾患概念の普及率はいまだに低く、確定診断に至る期間は平均20.2ヵ月を要する。若年者の息切れに対するエコー検査実施率は50.4%にとどまる。心電図とX線の実施を推奨しているので、息切れの訴えがあれば、心エコー検査をせずともこの2つは経時的に実施してほしい。

治療の変遷とソタテルセプトの有効性・安全性
日本では1999年にプロスタサイクリン製剤(PGI2)の発売を皮切りに、エンドセリン受容体拮抗薬(ERA)、ホスホジエステラーゼ5阻害薬(PDE5)、可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激薬が用いられるようになった。その結果、今では5年生存率が約74~90%に向上しているが、PAHの疾患進行の初期は血管収縮の要素が大きく、進行すると肺血管リモデリングが進展する傾向にある。既存の治療薬はいずれも血管収縮を抑制する。一方でソタテルセプトは細胞増殖を抑えることで肺血管リモデリングを抑制する。PAHの治療は、症状・活動制限を改善し、肺血管病変を抑制し、右心負荷を軽減させることを目的とするため、まずは既存の肺血管拡張薬で治療を開始し、改善が不十分な場合にはソタテルセプトを上乗せしていくことになる。

治療効果が高い反面、毛細血管拡張、頭痛、鼻出血などの副作用が認められたが、死亡例はなかった。本結果を踏まえて行われた実薬群のみの国内第III相020試験でも「同様の結果が得られていた」という。また、重症度が高い患者を対象とした海外試験においては、複合エンドポイント(全死亡、肺移植、PAH悪化による入院)のリスクが有意に低下した。ガイドラインでは、中リスクや高リスク患者への積極的な追加が推奨されている。

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました