ハンチントン病:遺伝子治療、マウス実験で成功--異常たんぱく質減少

ハンチントン病:遺伝子治療、マウス実験で成功--異常たんぱく質減少

以下は、記事の抜粋です。


手足が勝手に動いたり、歩きにくくなる遺伝性疾患「ハンチントン病」の遺伝子治療に、理化学研究所の貫名信行チームリーダーらがマウス実験で成功した。

ハンチントン病は、遺伝子の変化で生じた異常たんぱく質が、脳の神経細胞に蓄積して細胞死などを起こして発症する。日本の患者数は20万人に1人程度と推計されている。

チームは、異常になったたんぱく質に、分解を促す別のたんぱく質を結合させる方法を考案。この分解たんぱく質と接着剤役のたんぱく質をともにつくる遺伝子を、ウイルスを使ってハンチントン病マウスの脳に入れた。すると、異常たんぱく質は約9割に減り、マウスの寿命は2割延びた。

アルツハイマー病やパーキンソン病なども異常たんぱく質の蓄積が原因とされる。チームは同じ手法がこれらの疾患の治療に応用できるとみて、研究を進める。1日付の米科学誌ネイチャー・バイオテクノロジー(電子版)に発表した。


元論文のタイトルは、”Harnessing chaperone-mediated autophagy for the selective degradation of mutant huntingtin protein.”です(要約をみる)。

ハンチントン病 (HD) は、継代とともに伸長するポリグルタミン(polyQ)鎖をもつ変異型ハンチンチンタンパク質(HTT)の蓄積によっておこる神経疾患で、優性遺伝を示すポリグルタミン病の1つです。遺伝子レベルではCAGリピートが伸張するので、トリプレット・リピート病ともよばれます。

QBP1 (polyglutamine binding peptide 1)は、病的に伸張したpolyQ鎖には結合するが、正常なHTTのpolyQモチーフには結合しないことが知られているペプチドで、接着剤役として使われました。現在、国立精神・神経センターの永井さんらが見つけられたものです。

研究者らは、2コピーのQBP1と2種の異なるシャペロン(HSC70)結合モチーフをもつ融合タンパク質を設計し、細胞やマウスのHDモデルに発現させて変異HTTが特異的に分解されるかどうかを調べました。

融合タンパクを発現した培養細胞の変異HTTは、シャペロンを介したオートファジーによって特異的に分解されました。また、HDのマウスモデル(R6/2)の線条体内に、融合タンパク質を発現するウイルスベクターを導入するとHDの表現型(病状)が改善しました。

シャペロンを介したオートファジーは、2重膜によって細胞内の一部分をまるごと消化するようなマクロオートファジーとは異なり、正常なアリルでコードされたHTTタンパクには影響せずに、病的に伸張したHTTタンパクだけを特異的に分解します。

HSC70は他のシャペロンやコシャペロンと協同して病的タンパクを特異的に認識し、リソゾーム表面に導きます。リソゾーム表面のLamp2aと結合した病的タンパクは、リソゾーム膜を通過し分解されます。

R6/2マウスの寿命を29.6%も伸ばした治療はこれまでなかったそうです。

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