統合失調症に対するベタインの効果？

東大病院、統合失調症に対するベタインの効果を調べる臨床試験参加者を募集
以下は、記事の抜粋です。

東京大学附属病院は、統合失調症の患者を対象にベタインの有効性や安全性を調べる臨床試験を、同病院に通院中の患者に限らず広く参加者を募ると発表した。

同病院精神神経科では、以前に統合失調症の患者で血液中のベタイン濃度が低下していることを見出している。動物実験でベタインは神経保護作用があること等が報告されており、ベタインを補うことで治療効果が得られることを期待して今回の臨床試験を計画した。

ベタインは広く食用の魚介類や植物に存在し、人体ではホモシステインをメチオニンに変換する酵素の基質となる。統合失調症とは別の病気だが、ホモシスチン尿症という病気の治療薬として保険適応のある医療用製剤があり、同臨床試験ではこの医療用製剤が用いられる。

なお、同臨床試験の参加にあたっては基準が設けられており、基準を満たす場合のみ臨床試験の対象となる。試験期間は14～16週で、その間に9回受診するほか、ベタインの服用や、血液検査や症状評価が行われる。

ベタインはこれまでの治療薬とは異なるメカニズムで働く薬であり、将来的に医療で用いられるようになった場合、これまでの治療法で十分に改善しなかった患者にとって有効な治療選択肢のひとつになることが期待されるという。

臨床試験のタイツルは「統合失調症患者に対するベタイン投与の探索的試験」です（登録情報をみる）。

記事に書かれている「同病院精神神経科では、以前に統合失調症の患者で血液中のベタイン濃度が低下していることを見出している。」というのは、同じ東大病院のグループが2014年に発表した以下の論文のことだと思います。

A snapshot of plasma metabolites in first-episode schizophrenia: a capillary electrophoresis time-of-flight mass spectrometry study（論文をみる）

この論文には”Five metabolites had robust changes (increased creatine and decreased betaine, nonanoic acid, benzoic acid and perillic acid) in two independent sample sets.”と書かれており、血液中のクレアチンの上昇やベタインなどの減少が著明だったと書かれています。

しかし、2016年に理研のグループが同じ方法で測定した以下の論文では、血中のベタインレベルは健常者と統合失調症患者の間に有意差は認められなかったと報告されています。

Search for plasma biomarkers in drug-free patients with bipolar disorder and schizophrenia using metabolome analysis（論文をみる）

ベタインを売るサプリ業界は喜んでいると思います。騙されないようにしましょう。