血糖値を調節する膵臓の細胞を増殖させるホルモンをマウスで発見したと、ハーバード大のダグラス・メルトン教授らのチームが米科学誌セルに発表した。肥満や運動不足などが原因で起きる2型糖尿病の進行を抑える新たな治療法に結びつく可能性もあるという。
チームは主にマウスの肝臓や脂肪で作られるこのホルモンを、ベータトロフィンと名付けた。
マウスの遺伝子を操作し、このホルモンを過剰にさせたところ、血糖値を下げるインスリンを作り出すベータ細胞が、通常の17倍のペースで増殖した。増えたベータ細胞も正常に働くことを確かめたとしている。
元論文のタイトルは、”Betatrophin: A Hormone that Controls Pancreatic b Cell Proliferation”です(論文をみる)。記事には書かれていませんが、このベータトロフィン(betatrophin)は、すい臓のべータ(β)細胞を増殖させ、インスリン分泌能を飛躍的に高めるそうです。
これまでも様々な実験結果から、肝臓からβ細胞の増殖を刺激する因子が分泌されていることは推測されていたようですが、同定されていませんでした。研究グループは、インスリン受容体拮抗薬をマウスに投与するとβ細胞の増殖が12倍に増える現象を利用して、ベータトロフィンを発見したと報告しています。
本論文は、マウスでベータトロフィンDNAを注入するとβ細胞の増殖が飛躍的に増えたというところまでの報告です。ベータトロフィンの受容体分子を含めて、どのようなメカニズムでβ細胞の増殖が刺激されるのかは不明ですが、ヒトでこの系に働いてβ細胞を増やす薬物ができればすごいと思います。
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