以下は、記事の抜粋です。
鎮痛剤のアスピリンが、ある特定の遺伝子に変異がある大腸がん患者については死亡率を減らす効果がある、との論文が、10月25日付のNew England Journal of Medicine誌に掲載された。米ハーバード大の荻野准教授らが米国の患者を過去にさかのぼって追跡して分析、報告した。
荻野さんらは、医療関係者が参加する健康調査から、2006年時点で大腸がんと診断され、細胞を分析できた964人の経過を追跡した。このうち「PIK3CA」というがんの増殖に関わる遺伝子に着目、その遺伝子に変異があった161人と、遺伝子変異のない803人について、アスピリンを飲むかどうかで予後の違いを比べた。
遺伝子変異があったグループでは、アスピリンを飲む習慣がなかった95人のうち44人が昨年1月までに死亡、うち大腸がんが死因だったのは26人だった。一方、アスピリンを週に複数回飲んでいたのは66人で、亡くなったのは18人。このうち死因が大腸がんだったのは3人だった。
元論文のタイトルは、”Aspirin Use, Tumor PIK3CA Mutation, and Colorectal-Cancer Survival”です(論文をみる)。
PIK3CA変異型大腸がんの患者では、アスピリンの定期的使用が生存期間の延長と関連したが、PIK3CA野生型の大腸がん患者では関連しなかったそうです。これらの結果から、大腸がんにおけるPIK3CA変異は、補助療法としてのアスピリンの効果を予測する分子マーカーとなる可能性が示唆されています。
下の関連記事で紹介してきたように、アスピリンが大腸がんなどの腺がんの予防と治療に有効であるという報告がかなり蓄積してきました。
その中の1つの記事で紹介したニュースでは、ゲストの医師も女性ニュースキャスターもアスピリンを飲んでいました(記事をみる)。
彼らがアスピリンが適応となる疾患を持っているのかどうかわかりませんが、かなりの「健常人」ががんや梗塞の予防のためにアスピリンを服用しているようです。ただし、その場合は、医師とよく相談し、消化管出血などを適宜調べながら服用することが望ましいと思います。
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